マイコンユーザーのさまざまな疑問に対し、マイコンメーカーのエンジニアがお答えしていく本連載。56回目は、初級者の方からよく質問される「マイコンの電源の逆電圧が端子に印加されたら何が起こる?」についてです。
素朴な疑問から技術トラブルなどマイコンユーザーのあらゆる悩みに対し、マイコンメーカーのエンジニアが回答していく連載「Q&Aで学ぶマイコン講座」。
今回は、初級者から多く寄せられる質問です。
マイコンの電源電圧よりも高い逆電圧が端子に印加された場合どうなりますか?
データシートの「絶対最大定格」に端子の入力最大電圧はVDD+0.3Vなどと書かれていますが、これを超える電圧が印加された場合どうなりますか? また、なぜ+0.3Vまでは許容されているのですか?
マイコンの端子に印加できる電圧は、データシートなどに記載された「絶対最大定格」で規定されています。図1にSTマイクロエレクトロニクスの8ビットマイコン「STM8Sシリーズ」*1)のデータシートから絶対最大定格の説明文と表を引用しました。
この表から、端子には「電源電圧(VDD)+0.3V」を超える、または「GNDレベル電圧(VSS)−0.3V」を下回る電圧を印加してはいけないことになります。万が一印加した場合は、説明文中にあるようにデバイスに「永続的な損傷」を与える可能性があり、さらに長時間印加を続けるとデバイスの「信頼性」にも影響を与えてしまうため、絶対にやってはいけません。
マイコンの端子には保護用ダイオードが付いており、電源電圧よりも高い電圧が印加された場合とGNDレベルよりも低い電圧が印加された場合に、それぞれ電源またはGNDラインに電流を流し、端子の電圧を降下させて端子を保護する構造になっています。しかし、この時流れる「逆流電流」が大きいと、ハードウェアの破壊につながります(図2)
保護ダイオードに順方向電流が流れると、ダイオードの順方向電圧VFが発生します。そのため、端子側から電源側を見たときの電圧は、電源電圧VDDに順方向電圧VFが加わるため「VDD+VF」になります。従って、実際は端子に「VDD+VF」を超える電圧が印加されると、逆流電流が発生します。多くのマイコンの場合、VFは0.3V以上であるため、絶対最大定格の最大値が「VDD+0.3V」と規定されています。
参考ページ:*1)STM8Sシリーズ
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