図5にSTM8Sシリーズ*1)の絶対最大定格に関する別表を引用します。
図内の注釈3(アンダーライン部)に、「注入電流は外部でIINJ(PIN)値に制限する必要があります。正の注入はVIN>VDDによって誘導され、負の注入はVIN<VSSによって誘導されます」と記載されているように、IINJ(PIN)が逆流電流の規定に相当します。従って、VIN>VDDとVIN<VSSの場合に端子に流れる電流はIINJ(PIN)で示される±4mA以下にしなければなりません。
STM8Sシリーズは動作電源電圧の最大が5.5Vですが、同じSTマイクロエレクトロニクスの32bitマイコン STM32ファミリ*2)には、電源電圧が3V近辺でも5Vを印加することができる5V耐圧端子があります。図6(a)にSTM32マイコンの絶対最大定格を引用します。
この表から、VDD+4.0Vまでは印加可能であることが分かります。例えば、3Vで使用している場合は3V+4V=7Vまでは問題ないということです。しかし、VDD+4Vを超える電圧が印加されると、ハードウェアの損傷または破壊につながります。ここで、5V耐圧端子の保護ダイオードのカソードは、VDDではなく「5V耐圧用過電圧保護回路」につながっているため、端子から「5V耐圧用過電圧保護回路」までの経路で損傷または破壊が発生します(図6(b))
参考ページ:*2)STM32ファミリ
ここまでの説明で、絶対最大定格では端子に印加する電圧と流れる電流の2つが規定されていることが分かります。しかし実際の製品では、事故などの不測の事態により絶対最大定格を超える電圧が印加されたり、逆流電流が流れたりしてしまうことが想定されます。
また、電圧の変わるタイミングに発生するシューティング電圧などにより絶対最大定格を超えてしまったり、逆流電流が誘発されたりすることもあります。
「逆電圧を印加する時間が短時間なら大丈夫でしょうか?」といった質問も多く寄せられます。短時間であればデバイスに与えるダメージが小さいため、損傷や破壊は起きないと考えられます。しかし、ラッチアップに関しては、前述したように逆電圧の立ち上り/立ち下りが急峻でdV/dtが大きい場合に発生するため、印加時間を問わず発生する可能性があります。従って、絶対最大定格は守らなければなりません。
これらを防ぐ最も簡単な方法として「抵抗挿入」があります。端子に電源電圧以上の電圧を印加する場合の対応方法は「Q&Aで学ぶマイコン講座(9):商用電源(100V)を直接マイコンの端子に接続できますか?」に、STM8Sシリーズを題材にした詳細な計算方法を示していますので、こちらを参照してください。
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