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LEDの特性(2)LEDストリングの接続DC-DCコンバーター活用講座(36)(4/4 ページ)

» 2020年07月20日 11時00分 公開
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並列ストリングとグリッドアレイ――その優劣

 前セクションでは、1つのLEDが断線故障や短絡故障を起こした場合どうなるかについて述べました。並列ストリングの数が多いほど、1つのストリング内の1個のLEDの故障によって残りのストリングに故障が波及する危険は少なくなります。従って、並列に接続された5つのストリングのいずれかに断線故障が発生したとしても、残りの4ストリングのオーバードライブ率は125%に過ぎません。LEDは必要以上に明るくなりますが、ヒートシンクが適切である限り、故障を起こす恐れはありません。

 数多くのストリングを並列に接続することの欠点は、数アンペアに及ぶ電流を流すことのできるドライバが必要になることです。このようなドライバは高価であるか、見つけるのが困難です。また、高アンペア数の電流を供給できるLEDドライバを使用する場合は、いくつかの注意が必要です。いくつかのストリングのコネクター接続に不備があるなどの理由でLED負荷が小さ過ぎる場合、電流は一挙に残りのLEDに流れ込みます。従って、LEDドライバのスイッチを入れる前に、全ての接続が確実に行われているかどうかを十分に確認する必要があります。大電流LEDドライバ使用時に、不適切な配線によって高価なLED照明器具が破損してしまったという例は数多くあります。

 実際には、多くのLEDをドライブする必要がない場合は、並列ストリングの数をドライバ1つ当たり5以下に制限して、1台の大電流ドライバを使用するのではなく、低電流のドライバを複数台使用する方が安全です。

 長いストリングを使用するのも良い方法です。いずれかのLEDが短絡故障を起こした場合、そのストリングにおける電流増大量は、ストリングが長いほど小さくなるからです。

 もう1つの問題は、LEDを個別ストリングとして接続するか、ストリングをクロス接続してLEDアレイを構成するかということです。15個のLEDを使用する以下の例に、これら2つのオプションを示します(どちらの場合もドライバは同じ)。15個のLEDを3個ずつ5列に接続することも可能ですが、上に述べた理由から5個ずつ3列に接続する方が安全です。

図7:並列構成とグリッドアレイ構成のLED接続

 グリッドアレイの利点は、いずれかのLEDが故障した場合でも縦列内のLEDが全て使えなくなることはなく、故障LEDと同じ横列のLEDだけがオーバーロード状態となることです。いずれかのLEDが短絡故障を起こした場合、同じ横列内のLEDは点灯しなくなりますが、残りのLEDに流れる電流は正しい値に保たれます。

 15個のLEDランプが高い信頼性で動作すること、そしていくつかのLEDが断線故障や短絡故障を起こした場合でも残りが発光を続けるがことが重要な場合は、グリッドアレイソリューションが最良のLED配線方法です。

 グリッドアレイの欠点は、横列のVFが平均され、個々のLED順方向電圧に±20%の誤差があるためにLEDの明るさが全て同じにならない場合があることです。これは、ホットスポットを生じさせて一部のLEDの寿命を縮めることになるほか、見た目的にも望ましくありません。

 15個のLEDランプの光出力をほぼ等しくしてホットスポットを生じさせないようにすることが重要な場合は、LEDを並列ストリングとして配線するのが最良の方法です。

 フォールト耐性と均等な光出力が不可欠な場合は、ストリング数を3つにして350mAドライバも3つ使用するのが最善策です。


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執筆者プロフィール

Steve Roberts

Steve Roberts

英国生まれ。ロンドンのブルネル大学(現在はウエスト・ロンドン大学)で物理・電子工学の学士(理学)号を取得後、University College Hospitalに勤務。その後、科学博物館で12年間インタラクティブ部門担当主任として勤務する間に、University College Londonで修士(理学)号を取得。オーストリアに渡って、RECOMのテクニカル・サポート・チームに加わり、カスタム・コンバーターの開発とお客様対応を担当。その後、オーストリア、グムンデンの新本社で、RECOM Groupのテクニカル・ディレクタに就任。



※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。

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