スイッチング周波数が高くなる傾向に伴って、スイッチングデバイスの動的損失がより大きな影響を及ぼすようになります。これらの損失は、トーテムポールの1番目のレッグのスイッチとして構成した際のMOSFETの逆回復電流などに起因します。
実際、シリコンMOSFETでは動的損失が大きくなる可能性があるため、TPPFCアプリケーションでは設計に、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料が求められるようになってきました。これらの材料には、高周波数での動作や高温での動作が可能という利点もあります。これら2つの特性は、電力アプリケーションにおいて非常に有用です。
臨界導通モード(CrM)は、特に数百ワットまでのTPPFCに推奨される導通モードで、効率とEMI性能の間に適切な妥協点を提供します。連続導通モード(CCM)は、スイッチの電流(RMS値)と導通損失をさらに低減し、TPPFCを、定格電力がキロワット級のアプリケーションで使用できるようにします。
CrMを使用した場合でも、軽負荷時には効率が大幅に(最大10%)低下する可能性があり、待機時または無負荷時のエネルギー消費制限を満たそうとすると、難しい課題が生じます。解決策の一つは、最大許容周波数をクランプするか“フォールドバック”して、軽負荷時に回路を強制的にDCMにし、同等のCrM実装の場合よりも高いピーク電流を低くすることです。
TPPFCをCrM動作および周波数クランプと組み合わせることで、特にWBGスイッチを高周波レッグに使用した場合に、負荷の範囲全体で優れた効率を発揮する良好な中電力ソリューションを実現できるようになります。
もう一つ、解決すべき課題があります。同期して駆動されるアクティブデバイスが4つあり、CrMを強制するにはインダクタのゼロ電流交差を検出する必要があります。また、この回路は必要に応じて自動的にDCMに切り替わる必要があります。これは全て、高力率の維持と出力安定化のためのPWM信号を生成しながら実行しなければなりません。加えて、回路保護(過電流や過電圧など)も必要です。
一般的に言えば、複雑性を考慮すると最良のアプローチは、マイクロコントローラーに制御アルゴリズムを導入することです。ただし、このようなアプローチはコストが掛かる可能性がある上に、コード生成とデバッグも必要になります。これは多くの設計者ができるだけ避けたい要素でもあります。
完全統合型のTPPFC制御ソリューションは、マイクロコントローラーと関連コードを実装する必要がなく、高い性能や設計時間の短縮、設計リスクの低減など、多くの利点を提供します。
そうした統合型ソリューションの一例が、オンセミ(onsemi)製のミックスドシグナルTPPFCコントローラー「NCP1680」です。一定のオンタイムCrMで動作し、負荷の全範囲にわたって高いレベルの効率を保証します。NCP1680は、軽負荷時の周波数フォールドバックでの「バレースイッチング」を備えており、最小電圧でスイッチングすることで効率を高めます。デジタル電圧制御ループは内部で補償され、負荷の全範囲で性能を最適化しますが、設計プロセスは簡素なままです。
【著者:Yong Ang, Strategic Marketing Director, onsemi】
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