デジタルマルチメーターの基礎的な使い方について解説する本連載。今回は直流/交流電圧および抵抗の測定と仕様の見方について説明する。
本記事は、計測器専門の情報サイト「TechEyesOnline」から転載しています。
デジタルマルチメーターを使って直流電圧を測定する場合は、測定対象の電圧範囲がデジタルマルチメーター本体およびテストリードセットなどの耐電圧を越えていないことを確認する必要がある。今回の解説記事で使う34461Aの最大入力レンジは直流1000Vとなっている。また標準添付のテストリードは定格が1000Vとなっているため、1000Vまでの直流電圧測定を安全に行うことが可能となる。1000V以上の高電圧の測定方法についても記事中で説明する。
デジタルマルチメーターの直流電圧測定仕様は、温度や湿度が管理されている校正室で国家標準にトレーサブルな任意の直流電圧を発生できる高精度な校正器を基準として値付けされている。デジタルマルチメーターの仕様は、規定された温度環境(34461Aでは23℃±5℃)での電圧レンジに対する誤差と測定値に対する誤差で規定されており、規定された温度範囲外では温度係数による誤差の加算がされるようになっている。
下表に示す34461Aの直流電圧測定の仕様では測定レンジごとに仕様が規定されており、前に書かれた数字が測定値に対する誤差、後ろに書かれた数字が測定レンジに対する誤差となっている。いずれも誤差は%表現となっている。測定器メーカーによっては、誤差を%(百分率、parts per hundred)ではなくppm(百万分率、parts per million)表示する場合がある。1%は1万ppmと同じ意味である。また、製品によってはレンジに対する誤差表現は固定された値であるため、「最下位桁のカウント数」で表現される場合がある。
レンジ | 24時間 TCAL±1℃ |
90日間 TCAL±5℃ |
1年間 TCAL±5℃ |
2年間 TCAL±5℃ |
温度係数/℃ |
---|---|---|---|---|---|
100mV | 0.0030+0.0030 | 0.0040+0.0035 | 0.0050+0.0035 | 0.0065+0.0035 | 0.0005+0.0005 |
1V | 0.0020+0.0006 | 0.0030+0.0007 | 0.0040+0.0007 | 0.0055+0.0007 | 0.0005+0.0001 |
10V | 0.0015+0.0004 | 0.0020+0.0005 | 0.0035+0.0005 | 0.0050+0.0005 | 0.0005+0.0001 |
100V | 0.0020+0.0006 | 0.0035+0.0006 | 0.0045+0.0006 | 0.0060+0.0006 | 0.0005+0.0001 |
1000V | 0.0020+0.0006 | 0.0035+0.0010 | 0.0045+0.0010 | 0.0060+0.0010 | 0.0005+0.0001 |
注1)確度仕様の表現は±(読み値の%+レンジの%)となっている。 注2)仕様は、K=2のISO/IEC 17025(JIS Q17025)に準拠している。 注3)温度係数はTCAL±5℃から外れる場合、1℃外れるごとにこの値が追加される。 |
ベンチトップ型のデジタルマルチメーターでは、基準となる校正器を使って校正作業を行ってからの経過時間ごとに誤差を規定する場合がある。一般には校正周期が1年であることが多いので、この条件で仕様を確認する。
34461Aでは、直流電圧を測定するために設定する項目は下図のように構成されている。
直流電圧を測定する際には、本体のパネルにある「DCV」キーを押すと液晶パネルに下図の画面となる。この画面から、それぞれの測定条件を設定していくことになる。
最初に設定するのが左端にあるレンジになる。「Auto」に設定すると入力電圧に適したレンジが自動的に選ばれるので便利ではあるが、レンジ間誤差や測定スピード低下が生じるので測定対象に合わせたレンジを選択する場合がある。利用目的に合わせて選択を行う。
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