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ワイヤーボンド(3) ―― ワイヤーボンドの評価法中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(73)(2/3 ページ)

» 2022年12月27日 10時00分 公開

ボンディングの評価項目

 ワイヤーボンディングの接合機構は圧力と熱によって生成された金属間化合物を介しての接合であることは既に説明しました。
 したがって評価試験もこの点についてメカニズムの原理に従って評価していきます。

①カーケンダルボイドの成長
 カーケンダルボイドとは異種金属間で相互拡散速度が異なった場合、界面の移動が発生しますが歪みや異物が界面に存在すると界面の移動が均一ではなくなり、移動速度の速い原子側に空乏箇所が発生します。この現象をカーケンダル現象といい、発生した空乏箇所が集まるとボイドになって電子顕微鏡などで観察できる大きさまで成長します。最悪時には界面全体に拡がり隔離します。
 このボイドがカーケンダルボイドです。
 この現象は材料と熱エネルギーに依存しますので熱ストレスに関する評価試験で評価します。

②金属間化合物の厚み
 金属間化合物による接合の多くは最適の厚みがあります。この条件を外れると金属間化合物は脆(もろ)くなり外部からのストレスで破壊します。したがって圧力や温度が加わるような評価試験で評価します。

 このような評価内容を考慮すると次のような表1の信頼性試験は欠かせません。

USPCT(不飽和PCT) IEC 68-2-66
高温保存  
温度サイクル  
高温動作(電流印加) バッドの局所過熱
表1:必須信頼性試験項目
*USPCT:AEC-Q100シリーズではHAST試験と呼ばれます(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)

カーケンダルボイドとIMC

 図3(a)に示すように、2つの金属を溶け合わせて接合すると原子半径の大きい原子と小さい原子が対向し、原子半径の小さい原子は電子軌道が拡がり、逆に原子半径の大きい原子は電子軌道が縮む方向に力が作用します。これだけでは格子の並びに変化は生じませんが図3(b)に示すように材料中の異物や歪みがあるとその点を起点として原子は互いに拡散し合って(拡散速度差を→長さで表記)より応力を緩和しようとします。その結果、材料内に原子のない空隙ができます。
 また時として材料の組み合わせによっては図3(b)のランダムな相互拡散よりも図3(c)に示す整列した相互拡散の方がより応力を緩和でき、より安定になる場合があります。この状態が金属間化合物(Inter-Metallic-Compound)です。

 この図3(c)の金属間化合物の状態を詳細に見るとそれぞれの材料は格子のピッチが伸びたり、あるいは縮んだりしていることが分かります。したがってこの状態の原子は膨らむか収縮して境界面に歪みを作ります。そして安定しているということは他の原子の侵入を許さないということですので金属間化合物は硬く脆くなります。
 また金属間化合物の表面には図3(d)に示すように格子のピッチ差に起因した歪みが存在します。この歪みに温度サイクルやその他の熱ストレスが加わると原子の結合の手が隣の原子につなぎ替わり、最終的には結合が切れて原子レベルの空隙ができます。この空隙は熱ストレスと共に移動、結合、成長しボイドとなってやがて接合を破壊します。このボイド状態になったものが前述したカーケンダルボイドです。カーケンダルボイドはワイヤーボンドのみならず金属間化合物を利用するはんだ付けなどの界面にも発生します。

図3:原子配列の様子[クリックで拡大]

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