浜松ホトニクスは、HL-LHC実験向けのPDアレイ「8インチピクセルアレイディテクタ」を開発し、量産体制を確立した。同社の前試作品と比較して、PDアレイの面積が約2倍に拡大している。
浜松ホトニクスは2023年2月、高輝度大型ハドロン衝突型加速器(HL-LHC)の実験向けに、フォトダイオード(PD)アレイ「8インチピクセルアレイディテクタ」を開発し、量産体制を確立したと発表した。HL-LHC実験におけるCMS実験装置用に、2023年2月27日より供給を開始している。
同社はこれまでに、直径6インチウエハーを用いたPDアレイを試作。これをさらに大面積化するため、直径8インチウエハーの製造装置を導入し、ウエハー上の膜の厚さや不純物の濃度などの均一性を向上させた。
その結果、前試作品と同レベルの高放射線耐性を保ちながら、PDアレイの面積を約2倍に大型化した。また、PDアレイの全チャンネルを検査できる、専用の検査装置も新たに構築。高放射線耐性、大面積化に対応した、8インチPDアレイの量産体制を確立した。
欧州合同原子核研究機構(CERN)は、素粒子の1種であるヒッグス粒子の精密測定やダークマターの探索などに向け、初期宇宙の状態を再現するHL-LHC実験を準備している。従来のLHC実験よりも陽子同士の衝突頻度を高めることで、多くのデータを取得できるが、放射線のエネルギーが高くなることから、PDアレイにも高い放射線耐性が要求されていた。
開発した8インチPDアレイは、高エネルギー物理学用途では世界最大になるという。同社は、2025年夏頃までに、2万7000個をCERNに納品する予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.