用途に応じてSSDを最適化することで、性能の向上はもちろん、データセンター事業者にとってはTCO(Total Cost of Ownership)の面でもメリットが生まれます。SSDの最適化によって、事業者は3つの恩恵を受けることができます。
個々のアプリケーションに最適化されたSSDファームウェアは、リード/ライトの応答時間を最大で2分の1に短縮できます。前述の例では、ビデオストリーミングサービスのコロケーションプロバイダーが、アクティブなビデオストリーミング中にガベージコレクションを行わないよう、SSDのファームウェアを最適化できます。これによって、コロケーションプロバイダーはストリーミングの応答時間を保証でき、わずかな技術的な調整を収益性の高いビジネスメリットに変えることができるのです。
SSDは定期的に交換する必要があり、通常は3年間隔です。ですが、SSDをアプリケーションに最適化することで、ライフサイクルを5年まで延ばせることがストレステストで分かっています。これは、データの書き込みがSSDのデータスペース全体に、より均等に分散されることが理由です。ハイパースケーラーは、カスタムメソッドを用いてこれを実現します。しかし、アプリケーションに最適化されたSSDを利用すれば、これらの調整をSSDが継続的かつ自動的に実行してくれるので、独自のカスタマイズは不要です。
SSDの初期状態でのリード/ライト性能は急激に低下する傾向があり、場合によっては初期状態の3分の1程度にまで低下することもあります。この場合でも、アプリケーションに最適化されたSSDであれば、アプリケーション固有の調整によってデータの書き込み処理を改善し、大幅に性能を向上できます。最適化されたファームウェアはSSDの寿命を延ばすだけでなく、初期レベルでのリード/ライト性能を維持し、性能低下を10%未満に抑えることができます。アプリケーションに最適化されたSSDは、ライフサイクルの延長と性能向上というメリットを同時に提供し、コスト効率の大幅な向上に貢献します。
競争の激しい市場において、データセンター事業者がアプリケーションの負荷にできるだけ正確に対応するには、ストレージ機器を適合させる必要があります。車を購入する際には、高速道路や市街地のアスファルトを走るのか、それとも岩の転がる荒野や砂利道を走るのか、それぞれの運転スタイルや直面しそうな道路状況に合ったものを選ぶ必要があることは容易に想像できます。データセンターのストレージにおいては、目の前のタスクに合わせて機器を調整する必要性は高くないかもしれませんが、これによって何百万人もの顧客体験が左右される可能性があることを考えると、決して見過ごすことはできないでしょう。個々のアプリケーションにSSDファームウェアを最適化することで、データセンター事業者はそれぞれの市場セグメントで優位に立つことができます。そして、より高速で耐久性が高く、信頼性の高いソリッドステートドライブによって、市場で先頭を走ることができるでしょう。
【筆者:友森健一郎、スイスビットジャパン 代表取締役】
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