簡便な対策として過電流を検知した場合に同期整流を解除するとVFが大きくなり損失が増加するのでこの対策は好ましくありません。ここでは一部のICに用いられているts伸長型の回路を説明します。
図2の電圧−電流特性に示すように電流制限が開始されると出力電圧は垂下します。この出力電圧の低下を検出して三角波の発振周期を伸長させます。例えば決められた値以下に電圧信号が低下したことを検知して三角波発振回路の充放電電流を制御するなどします。
この結果、発振周期tsが大きくなり一定の遅れ時間が発生しても過電流を制限することができるようになります。
その他の方法としては同じく電圧の低下を一定時間連続で検知したらダイオードの発熱を防止するために間欠的にICの起動、停止を繰り返すタイマー保護動作方式も市販ICには採用されています。
ただし、いずれの方式も過電流保護回路の動作期間中は出力電圧が低下しているわけですから誤差増幅器は最大出力状態になっています。ですから負荷の異常が解除されると最大出力が負荷に供給されてオーバーシュート現象が発生し、負荷に損傷を与える場合があります。
この異常電圧を避けるため過電流保護回路の動作と同時に誤差増幅器も出力を絞ることを考慮した回路設計が求められます。
例えば過電流検知信号で誤差増幅器出力端子を強制的に低下させる、あるいは誤差増幅器の入力に出力低下の制御信号を注入することを考えます。
このような配慮も過電流保護回路には必要になります。DC/DCコンバ―ターの設計には単に電流を制限すれば良いというものではないということです。
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