マイコンユーザーのさまざまな疑問に対し、マイコンメーカーのエンジニアがお答えしていく本連載。今回は、初心者の方からよく質問される「マイコンのパッケージ」についてです。
素朴な疑問から技術トラブルなどマイコンユーザーのあらゆる悩みに対し、マイコンメーカーのエンジニアが回答していく連載「Q&Aで学ぶマイコン講座」。
今回は、初心者から多く寄せられる質問です。
マイコンのパッケージには、さまざまな種類がありますが、どのように選べば良いでしょうか? 各パッケージの特徴と使い方を教えてください。
マイコンのパッケージは、シリコン上に作られたマイコンチップを保護するだけでなく、外部との電気的接続や放熱作用などの役割を果たしています。また、外形は、ユーザーがマイコンを実際の製品(家電品、産業機器、IT製品など)に搭載する場所や環境、スペースなどに応じて最適なものが異なります。マイコンをプリント基板(PCB)上に実装する際、カメラレンズのような小型の製品では実装スペースが狭くなるため、極力小型のものが選ばれます。産業機器などでは、実装スペースよりも放熱特性に優れた外形のものが選ばれます。
一方で、小型パッケージを選ぶとピン間隔も狭くなるため、PCBの配線加工が細かくなり、PCBのコストが高くなる傾向があります。最悪の場合、配線できない可能性もあります。かといって、PCBを多層構造にすると配線領域は増えますが、PCB自体のコストが高くなります。
マイコン以外のICにも、さまざまなパッケージが使用されていますが、本記事ではマイコンに使用されるパッケージについて解説します。表1に、STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)の汎用32ビットマイコンSTM32ファミリー*1)で使われているパッケージについて、特徴を示しました。
国内のエンジニアの多くは、シリコン状態のICやマイコンを、「ICチップ」や「マイコンチップ」と呼びます。ところが海外エンジニアは、ダイ(Die)と呼びます。海外出張した際に、マイコンチップという言葉を使っていたら、海外のエンジニアから「チップは半導体には使いません。木材などの木っ端をチップと呼ぶので、半導体にはそぐわないです」と指摘されました。確かに、外資系の半導体メーカーでは「ダイ」という呼称を使います。しかし日本では、Webや雑誌などでも主に「チップ」と呼ばれているため、本記事もそれにならい「チップ」として解説します。
以前、「実装ってどういう意味ですか?」と質問されたことがあります。もともとは、機器などの部品を「実際に装備/装着する(取り付ける)」ことを意味しますが、最近ではハードウェアだけでなく、ソフトウェア(プログラム)に新たな機能を組み込むことを指して使用されることもあります。混乱を避けるために、本記事では、ハードウェア的にPCBにマイコンを取り付ける意味で使います。
*1)STM32ファミリー
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