最近のマイコンには、内蔵基準電圧回路、温度センサーが内蔵されています。
マイコンで使用される内蔵基準電圧回路や温度センサーの多くは、BGR(Band Gap Reference:バンドギャップリファレンス)回路を使っています。BGRは基準電圧回路の一種で、出力電圧は1.2V近辺のものが多いです。
PN接合を作ると、接合部でエネルギーの差によるエネルギーバンドができます。このバンドの最も高いエネルギー(価電子帯)から、最も低いバンド(伝導帯)までのエネルギー準位および、そのエネルギーの差をバンドギャップと呼びます。
BGRから電圧を取り出す方法は、PN接合素子の順方向電圧を利用する方法が一般的です。ダイオードに順方向電流を流すと、順方向電圧が発生するため、これを取り出します(図5参照)
BGRはPN接合の特性なので、マイコンの電源電圧に依存せずにほぼ一定電圧(1.2V近辺)が得られるということで、内蔵基準電圧に使用されます。図6に、STM32G081Rマイコン*4)の内蔵基準電圧回路の特性を示します。ここではTyp.値が1.212Vです。
(*4)STM32G081Rマイコン
一方で、バンドギャップエネルギーは温度が上がると減少する傾向があります。この温度特性を利用すると、温度センサーを作れます。
内蔵基準電圧として利用されるBGRは温度特性の影響を受けずに、なるべく一定電圧を得られるように設計されますが、温度センサーとして利用されるBGRは、温度によってなるべく電圧が変化するように設計されます。温度センサー用のBGRの電圧をA-Dコンバーターで電圧に変換して温度に換算します。図7に、STM32G081マイコン*4)の温度センサーの特性を示します。ここでは、0.76Vの時が30℃に相当します。
時々、マイコンの環境温度が測れると思っているユーザーがいますが、温度センサーで測定できるのは、マイコンのシリコン上に作られたPN接合の温度です。
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