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自動車設計の進化で電子部品への要求はどう変わる?DigiKeyとMolexが解説(2/4 ページ)

» 2024年07月26日 13時00分 公開

「定番レイアウト」の確立はもう少し先に

 McWhinney氏は、「EVの“定番レイアウト”が確立するのはもう少し先のことになりそうです。しばらくは新しい技術とイノベーションをめぐる競争が続くとみられています」と語ります。「車載業界における設計は堅牢性、信頼性、実績を重視する傾向が強いのが特徴です。ですが、この変化の激しい時代、特に、コストが高い試作においては、登場したばかりのプラットフォームも数多く存在します」

 メーカー、製造年、車種に関係なく、どのEVにおいても、ソフトウェアを活用したリアルタイムの意思決定を可能にするために、信頼性の高い電力伝送と高速データ伝送が必要とされます。

 車両システムの機能と動作を管理するSDV(Software Defined Vehicle)プラットフォームの普及に伴い、自動車設計ではマイクロプロセッサが進化し、パラダイムシフトが起きています。ハードウェアへの依存度が減少すると同時に、モジュール性、柔軟性、接続性が向上し、極めて複雑なシステムを管理するために必要な部品や配線が少なくなります。

 Ulery氏は、「自動車の配線はこれ以上増やすことはできません。業界は転換期を迎えているのです」と説明します。「車載産業は、コンピュータ業界から技術を取り入れ始めています。ギガヘルツ帯で動作する2線式イーサネット規格も採用したので、車内の配線数を削減できるようになりました」

 「48V系システムも同様です。配線の細密化が可能になりました。さらに、SDV(Software Defined Vehicle)のゾーンアーキテクチャを採用することにより、1つのコントローラーとデバイスを同じバスで接続できるので1本の配線で済みます。銅コネクターの減少が進む中で、将来の自動車で起きる高速なコネクティビティの要件に対応したエンジニアリングと性能の向上が進むとみられています」(Ulery氏)

広がる電動化/ハイブリッド化

 自動車メーカーがバッテリー式電気自動車(BEV)の生産に注力している一方で、米国の消費者は充電インフラや車両の航続距離が改善されるまで様子を見ている状況です。2023年のAP通信の報道によると、米国におけるハイブリッド車の売り上げの伸び率が76%増加する一方で、EVの伸び率は停滞しています。

 「北米における電動化は断続的に進んできました。一度に200km近く走るのであれば、充電インフラの改善が必要になります。それ故、多くのプラットフォームで最も人気のある選択肢はハイブリッド車です。EVが今後どれだけ普及するかは経済状況次第かもしれません。政権によっても左右される可能性もあります」(McWhinney氏)

 とはいえ、乗用車以外のセクターにおいても電動化は広がりを見せています。企業や組織が保有車両の持続可能性に対する意識を高める中、ラストワンマイル配送車、公共交通機関、トラックヤード用の小型/中型車両の一部はバッテリー型やプラグイン型のEVや水素自動車などの代替燃料車両に切り替わりつつあります。

 「米インディアナ州インディアナポリスで開催された2024 Work Truck Weekでは、セミトラックよりも小型の車両はほぼ全て電気モーターを搭載しており、水素エンジンシステムを採用しているものも数多く見られました。水素エンジンはゼロエミッションなので環境面で優位です」(Ulery氏)

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