最近のマイコンは、低消費電力モードで動作する機能の電源と、動作しない機能の電源が分離されています。これにより、低消費電力モード時に動作が必要な機能にだけ電源を供給し、動作しない機能の電源供給を停止します。
図3に、マイコンの電源系統(図1)をより詳しく記載した図を示します。時計機能のRTCと時計用クロック発生回路は、低消費電力のモードの時でも動作を続けなければなりません。そこで、CPUやRAMなどの電源は、メイン電源から切り離しできるようにしておきます。
RTCや時計用クロック発生回路の電源領域をバックアップドメインと呼びます。バックアップドメインは、通常動作時は、メイン電源から電源が供給されますが、マイコンが低消費電力に入り、メイン電源の供給が停止したときに、バックアップ電源(VBAT端子)からの電源供給に自動的に切り替わります。バックアップ電源には、電池などのバックアップ用電源をつないでおくと、時計機能はメイン電源が無くても、バックアップ電源で動作を続けることができます。時計用クロック発生回路には水晶振動子が必要です。水晶振動子の駆動もバックアップ電源で行います。
バックアップドメインに小容量のRAMを搭載しているマイコンもあります。メイン電源を遮断するとRAMに保存されていたデータが消えます。そこで、消えてほしくないデータだけをバックアップドメインのRAMに移しておきます。すると、低消費電力モードから復帰*2)した際に、保存したデータを再使用できます。
バックアップドメインにもリーク電流は発生しますが、メイン回路に比べるとはるかに論理規模が小さいため、リーク電流もはるかに小さくなります。
*2)Q&Aで学ぶマイコン講座(63)「低消費電力モードからの復帰方法」
ここでは、バックアップ電源に電池の例を示しましたが、通常の電源でも構いません。また、アプリケーションによっては大容量のコンデンサーでも良い場合があります。その場合、大容量のコンデンサーを低消費電力モードに入るまでに充電する必要があります。マイコンによっては、メイン電源からバックアップ電源を充電できる機能を持った製品もあります。STマイクロエレクトロニクス製のSTM32L4シリーズ*3)には、バックアップ電源をメイン電源から充電できる機能があります。
時計機能やRAMのデータ保持だけなら、電圧もメイン電源よりも低く、電流容量の小さい電源で全く問題ありません。
*3)STM32L4シリーズ
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