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反転形DC/DCコンバーターの設計(1)基本回路と動作原理、動作解析たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(15)(2/4 ページ)

» 2025年03月27日 11時00分 公開

コンバーターの動作解析

状態の平衡−1

 図4の電流波形を基に平衡状態にあるDC/DCコンバーターの動作条件を考えます。平衡状態ですからDC/DCコンバーターの電圧は安定していて同じ波形が繰り返されています。
 平衡状態ですから1式の電流変化と2式の電流変化が等しくなります。この値をΔIとすれば両式の関係は3式になります。

 この3式をVoについて解くと電圧変換の様子を表す4式が得られます。

ですから、

 この4式はインダクターの電圧・時間積の関係からも求められます。この4式をδについて解くと目標電圧への変換に必要なδを求める5式になります。

 δはオン時間の時比率で値は0〜1ですから4式に代入するとδ=0でVoは0Vになり、δが1に近づくにつれて急激に出力電圧は上昇します。つまり、出力電圧の極性は反転しますが、その代わりに制御範囲が0Vから無限大まで可能になります。この反転形コンバーターの変換幅の広さは降圧形など他のDC/DCコンバーターに見られない特徴です。δを制御することで出力電圧を0Vに制限できますので降圧形DC/DCコンバーターと同様に過電流を検出して短絡電流を制御することができます。

 しかしコンバーターの電圧変換比を表す4式の分子、分母にδがみられることは降圧形DC/DCコンバーターや昇圧形コンバーターよりもδの微分利得が向上していることになります。例えばδが微少(例えば+1%)変化した場合、それぞれのコンバーターの微分利得は表1の各式で表されます。表1から

  1. 降圧形以外はδによって微分利得が変わること
  2. δの設定値によって微分利得の順位が変わること
  3. δが大きい領域では反転形コンバーターの微分利得が一番高いこと
  4. 反転形の微分利得は常に1以上であること

が分かります。

 この現象は制御ループ全体の利得に影響するので旧モデルでは安定していたものが、時比率δが変わった新モデルでは制御が不安定になるといった現象を引き起こします。

注)δの変化幅の絶対値で比較すると同じδの1%変動でもδが小さい領域では相対比が大きくなります。ここではδの相対変化ε[=(Δδ)/δ]で評価しました。

図4:反転形DC/DCコンバーターの電流図[クリックで拡大]

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