図1(b)のSWモデルを使って図の定数で動作させた時の各部の値を計算し、図5に示すSPICEによるシミュレーション結果と比較します。
最初に各部の損失がない場合を取り上げます。
Vcc=10V、L=55.5μH、ton=3.34μs、toff=6.66μs、RL=3.33Ωです。
SPICEでは出力電圧が60mV程度小さく計算されていますが各電圧制御スイッチに10mΩが設定されていて、この抵抗分成分に発生する電圧降下の影響によるものです。
FET-SWには2.2Ap程度の矩形電流が流れるので22mV程度の電圧降下が生じ、チョークには9.98V程度しか印加されません。
Di-SWにも2.2Ap程度の矩形波電流が流れるので同じく22mV程度の電圧降下を生じます。これらの効果を計算するとVo=(10−0.022)×0.334/0.666−0.022=4.98Vとなりシミュレーション結果と0.5%程度の精度で一致します。
今回は入力電圧と異なる極性の出力電圧が得られる反転形コンバーターの動作について説明しました。その結果、出力電圧Voはδ/(1−δ)に比例し、また時比率δが大きくなるにつれてコンバーターの利得が高くなることも説明しました。
次回はコンバーターに使用する部品の定格について説明します。
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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