(2)でも触れた通り、片面基板はパターンの耐熱量が少ない。これを理解して、ハンダごての温度と熱を加える時間をしっかり管理しないと、パターンが剥げてしまい、修復が大変だ。余談だが、交換する部品を外した後で、熱負荷を小さくしてスルーホールを確保する治具を紹介しよう。これには耐熱性が高く先端が固くとがった非金属で自然の素材を使っている。図3に示す。
図3は柚子の木の『とげ』だ。自宅の庭にある柚子の木を剪定した時に残っているとげを切って保管し、基板のスルーホールを確保する治具で使っている。片面基板のハンダを低温で溶かし、この治具を差し込んでスルーホールを開けている。この方法であれば、基板上のはんだを吸い取って廃棄する必要もない。
PFC回路では機器に供給された電力を100%使い、力率(Power Factor)を上げる回路が追加されている。PFC電源はEUで実施されたCEマーキングで本格的に採用された。力率を上げるためにコイルをFETで高速にスイッチングしコイルから発生した逆起電力で、一次側の電解コンデンサーを高周波で充放電し、DC385V程度の電圧を生成している。このため、10年程度の稼働で電源が故障する。これは電解コンデンサーを高周波で充放電するため、電解コンデンサーの内部抵抗が発熱し電解液がその熱で揮発してしまうからだ。この結果、二次側の負荷をつないだまま連続で動作させると、容量が低下した電解コンデンサーに流す電流量が大きくなり、FETが過熱して短絡する。この後、ヒューズやコイルが断線して電源は動作停止する。PFC電源の昇圧回路例を図4に示す。
図4は単相電源のPFC回路の例だ。交流電源を整流し、チョークコイルの右側のFETをスイッチングしてコイルに逆起電圧を発生させ、それをコンデンサーへ充電して385Vの電圧を生成している。入力電圧が低いときはFETのオン時間を長くして電流を増やし、逆起電圧を上げる。全ての交流電力を使って二次側の電圧を生成し、力率を上げている。
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