海外製の電源では、突入電流保護回路を簡略化するために、パワーサーミスタ(NTCサーミスタ)を使った回路が多数見受けられる。NTCサーミスタは常温では高い抵抗値だが、温度が高くなると抵抗値が10分の1程度に低下する。NTCサーミスタを使うことで、突入電流は小さくできリレーは不要になるが大きな欠点がある。それは、電源の瞬停だ。電源の瞬停が発生すると、NTCサーミスタは温度が高いままなので、電源が復帰した時に突入電流が発生し、ブレーカーが作動し、ヒューズが切れることがある。電源を切ったら数分待って再投入すれば安全だ。
焼損跡がある機器は、焼損原因が完全に取り除かれていることを十分に確認する必要がある。(1)で述べた液漏れ電解コンデンサーを使った機器を修理する場合は、電解コンデンサーを交換するだけでなく、基板上に残った漏れた電解液を洗い流す必要がある。この作業を怠ると基板上に残った電解液が原因で修理した基板が焼損することになる。焼損跡がある基板は、その原因をしっかり確認し、十分に調査して修理することが重要だ。例を図6に示す。
図6はトランスの下でパターンが漏れた電解液で短絡し、焼損したものだ。
基板のはんだ面や部品面がコーティングされた基板は基板の点検でいろいろな注意が必要だ。それは基板全体に保護膜があるので、保護膜を破らないとテスターやオシロスコープで動作の確認ができない。古い基板のコーティングは恐らく、液漏れ電解コンデンサーでの不具合対策と思われる。基板の検査が終わった後にコーティング液へ漬けて、乾燥させている。しかし、漏れた電解液がコーティング剤の下にとどまるため図1の例のようにパターンが腐食し、断線することがある。検査するときは、針を用いた工具が必要になり、慎重に動作を確認しないと誤った検査になることがある。このため、筆者は図7のような治具(針)をテスターの先端に付け、保護膜がある基板を検査している。
図7は海外の通販サイトで購入したテスト用の針で接続部に合わせた金具を入れている。これをテスターの先端に付け、針をパターンにしっかり刺して、回路部品を確認している。
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