この記事を書いた後に抜けがないか考えてみたら、頻度は少ないが3つのリスクがあったので付け足しておく。
シャントレギュレーターはスイッチング電源には欠かせない部品だ。1980年ごろの設計ではシャントレギュレーターの発振は全く考慮されていなかった。シャントレギュレーターは3端子のオペアンプでありゲインが高いので発振することがある。なお、カソードとゲート間の容量が1μF未満か10μF以上であれば、ほぼ発振しない。電源の二次電圧が安定しない場合はこの発振が疑われる。特にNo10のコーティングされた基板ではシャントレギュレーターの周辺に大きな浮遊容量が発生し、発振して電圧が安定しなくなることがある。
電源制御ICは電源投入時に整流電源から微小の起動電流を供給され、初回のパルス信号を出してトランスをスイッチングする。この時、サブトランスの出力を整流してDC電圧を生成し、2回目以降は連続してパルスを発生させ2次電源を生成する。この整流にはSBDが用いられる。SBDの逆耐圧は40V程度だ。しかし、負荷が重くなるとトランスのオン時間を増やし、ICの動作電圧も高くなるのでトランスの逆電圧も高くなる。この高くなった逆電圧でSBDが劣化し、短絡する可能性がある。
負荷が接続されていない状態で、消費電力を下げるため待機電力動作をする機器がある。この機器は出力電圧が安定しないので故障と判断してしまうことがある。こうした機器の修理では出力に5W程度の負荷をかけてみると良い。これで電圧が安定すれば、待機電力仕様の電源が分かる。
電源や電気機器の修理をするときに心掛けてほしいのは、消費電力を測定し、正常時の電力を記録することだ。電源ユニットの場合、電力が0の場合はヒューズが切れている。0.5W未満では電解コンデンサーに充電が行われたが、スイッチング動作が行われていない。2W程度では出力電圧が不安定である。5W以上あればほぼ正常に動作しているという目安になるだろう。
今まで挙げた修理のリスクは本連載の過去記事でも報告しているので、時間があるときに読んでみるといいだろう。
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