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3種のDC/DCコンバーターのまとめ(3)電流不連続モードにおける各波形の振る舞いたった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(24)(3/3 ページ)

» 2025年12月24日 11時00分 公開
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2)リップル電圧の図式解法

 ここでは理解しやすいと思われる表1の降圧型DC/DCコンバーターを取り上げて表2の図式解法を用いて説明をしていきます。

基本的な計算の流れは、
①〜②で三角形の面積を求めて1周期平均を取ることで出力電流Ioを求めます。
③〜⑤で三角波のピーク値とIoの比を使って三角形の中でIo以上になる面積を求めます。この面積が充電に使われる電荷Qです。⑥〜⑦では求めた式にIp(=ILP)を計算する実際の式を代入していきます。
⑧〜⑩ではリップル電圧ΔVr、リップル含有率ηを求め、最後に式を簡素化しています。

 電流不連続モードでは電流波形が連続していないので平滑キャパシターCへの充電時間の算出が単純ではありませんが、式そのものは比例計算と1次式です。表2の図と式を見比べれば式の理解は難しくありません。

 表2は降圧型DC/DCコンバーターを取り上げましたがこのコンバーターの負荷へのチョーク電流波形は普通の三角形です。
 この波形に対してオンーオフ型コンバーターでチョークから負荷へ流れる電流波形は直角三角形です。つまり波形の差は上昇波形に相当する成分の有無だけです。
 この点に注目して表2中の式のδに関する項を変形すれば他のコンバーターの式と類似の形になることは容易に類推できます。各コンバーターの章で既に説明した内容はこのような流れになっています。

 昇圧型と反転型については特に取り上げませんので各自で図や説明文、式をなぞってください。

表2 表2:不連続時のリップル電圧の図式解法[クリックで拡大]

 今回は3種のコンバーターのまとめとして電流不連続モードについて説明をしました。
 次回は連載第7回の「ステップダウン形DC/DCコンバーターの設計(5)」の過電流制御で説明を保留した「過電流保護回路の課題−2」のサブハーモニック発振と呼ばれる異常波形について図式解法で説明を試みたいと思います。


執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


⇒【連載「たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計」バックナンバー】

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