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» 2011年01月01日 00時00分 公開

混迷深まるHDビデオの無線伝送乱立する規格と技術の壁で(5/5 ページ)

[Brian Dipert,EDN]
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60GHzの標準化

 業界関係者らの懐疑的な見方をよそに、SiBEAM社の取り組みは続いている。同社は2010年のCESにおいて、第2世代のチップセットを発表した。すでに量産体制にあるという。ネットワークプロセッサ「SB9220」とRF送信機「SB9210」は、マルチメディアソースでの使用をターゲットとし、ネットワークプロセッサ「SB9221」とRF受信機「SB9211」はディスプレイなど伝送先での使用をターゲットとしている。SiBEAM社は2010年のCESにおいて、OEMのリストに新たに加わった米Vizio社と、エクイティ投資を行った小売業者の米Best Buy社との提携も発表した(写真3(b))。また、2010年5月には、WirelessHD Version 1.1の仕様を発表している。AMIMON社のWHDI Version 2.0をほうふつとさせるWirelessHD Version 1.1は、データレートを10Gbpsから28Gbpsに上げ、いわゆる4K(4096×3072)の解像度や、3Dといった、負荷の大きいビデオストリーム処理にも対応する。暗号化についても、DTCP以外に、HDCP Version 2もサポートするようになった。ネットワークサポートとしては、携帯機器の同期とIP(Internet Protocol)のカプセル化までを含み、消費電力は携帯型電子機器に適用できる程度にまで低減されている。また、SiBEAM社は2010年5月、60GHzにおいて競合するWiGigアライアンスにも対応可能なデュアルモードでのサポートも発表した。まずは、現在提供されているRFトランシーバ「SB8110」と、これに付随する開発キット「SK8100」でサポートを開始する。


図1 60GHz帯を利用する無線規格 図1 60GHz帯を利用する無線規格 WirelessHDと、WiGigアライアンスの競合技術は、どちらも60GHzの免許不要帯域を利用する。具体的な帯域割り当ては、地域によって異なっている(a)。公開されているドキュメントでは、WiGigが60GHzにおいてIEEE 802.11のMACレイヤーを採用するのかどうかといったことは明確にされていない(b)。WiGigの推進派は、同技術で、IP、DisplayPortやHDMIのマルチメディア、USBやPCI Expressのデータ、パケットなどを伝送する計画である(c)。

 WiGigアライアンスは、2009年5月にIntel社やMicrosoft社などによって設立された。それ以来、単一のチップセットで、2.4GHz/5GHzのIEEE 802.11および60GHz帯無線ネットワークの両方との互換性を実現することを目標として掲げている。同アライアンスとWi-Fiアライアンスは2010年5月、「60GHzにおけるネットワークもサポートする次世代規格の認定プログラムの策定を目標に、技術仕様を共有し、協力体制を構築する」と発表した。両団体は、WiGigの伝送距離を超える伝送に対しては、60GHz対応の機器で自動的に2.4GHzまたは5GHzの帯域にダウンシフトできるようにしたいと考えている。また、WiGigの伝送距離については、高度な適応型ビームフォーミングなどの手法を取り入れることによって、WirelessHDの10mよりも延長したいとしている(図1)。

 WiGigアライアンスのドキュメントには、可変帯域幅の性能について明記されている。WiGig Version 1に基づくシステムの中には、EDAC(Error Detection and Correction:誤り検出/訂正)のオーバーヘッドを含めて最大7Gbpsのデータ伝送速度を実現するものもある。すなわち、4ストリーム(600Mbps)のIEEE 802.11nよりも10倍以上高速だということになる。しかし、電池駆動の機器なども含めて、WiGigの仕様に準拠するすべての機器が実現可能な最大データ転送速度は1Gbpsである。このように帯域幅に差が生じる理由の1つは、利用する変調方式および符号化方式が異なることである。WiGigアライアンスのウェブサイトによると、OFDMは、広い範囲の遅延を許容する長距離通信をサポートすることにより、障害物や反射信号の処理に柔軟性を持たせているという。OFDMでは、最大7Gbpsの伝送速度を実現可能となっている。一方、シングルキャリアの符号化は、一般的に消費電力が少なくなる。そのため、小型で低消費電力の携帯型機器にはこちらのほうが適している場合が多い。シングルキャリア技術は、最大4.6Gbpsの速度をサポートする*12)

 Wi-Gigアライアンスのドキュメントには、「変調/符号化方式は、プリアンブルやチャンネル符号化などで共通の要素を使用し、WiGig機器のメーカーの実装を簡素化する」と記されている。公開されているドキュメントでは、WiGigがIEEE 802.11 MACを60GHzに拡張するのか、それとも60GHzでは、IEEE 802.15.3など、ほかの方式を利用するデュアルMACの手法を新たに考案するのかについては明らかにされていない。少なくとも一部のWiGigアライアンス加盟企業は、提携によって技術の統合を目指すことになるだろう。例えば、イスラエルWilocity社は2010年7月、長期にわたってWi-Fiに取り組んでいるAtheros社との提携を発表した。WiGigは、IEEEとの関係をさらに拡大し、その技術を、スループットが非常に高い60GHzネットワーク向けのIEEE 802.11ad規格の基盤とすべく推進活動を行っている。


脚注

※12…"Defining the Future of Multi-Gigabit Wireless Communications," WiGig White Paper, Wireless Gigabit Alliance, July 2010


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