「ADXL362」は、消費電流を2μAまで削減したことで、民生機器だけでなく、電池による数年から10年程度の連続利用が要求される産業機器などにも使用することができる。
アナログ・デバイセズは2012年6月、低消費電力を最大の特長とする3軸MEMS加速度センサー「ADXL362」を発表した。100Hzでサンプリングしているときの消費電流を、同等レベルの競合他社品に比べて約1/5〜1/10にあたる2μAまで削減している。自動車が衝突するような大きな衝撃の検知ではなく、重力や傾き、生体の動き、低周波の振動といった、低い加速度を測定する用途に向けた製品である。測定範囲は±2g、±4g、±8gで、レジスタで3つのうちのいずれかに設定できる。分解能は±2gのときに1mg/LSB、±4gで2mg/LSB、±8gで4mg/LSB。民生機器や産業機器といった用途に向ける。
ADXL362には、通常モード、ウェイクアップモード、スタンバイモード(スリープモード)という3つの動作モードがあり、そのいずれにおいても低消費電流を実現している。通常モードでは、上述した通り、100Hzでサンプリングしているときの消費電流が2μAである。ウェイクアップモードとは、内部では6Hzでサンプリングをしているものの、外部にはデータを送っていない状態を指す。同モードの消費電流は300nA。ウェイクアップモードでは、一定以上の加速度を検知するとデータを送信するよう設定できる。また、スタンバイモードとは、まったくデータを取っていない状態で、このときの消費電流は10nAとなっている。なお、ADXL362の電源電圧範囲は1.6〜3.6Vである。
アナログ・デバイセズは詳細を明らかにはしなかったが、センサー部分から信号を取り出し、アンプで増幅する部分の回路設計を改善したことで、低消費電力化を達成したという。
同社によると、「当社の従来品や、競合他社品を含め、これまでは、100Hzでサンプリングする際の消費電流は10μAオーダーが一般的だった」という。これを2μAまで削減したことで、電池の交換が容易な民生機器だけでなく、広大な敷地に設置されたインフラ設備や、高所の建設現場に置かれた機器など、電池の交換が難しい、あるいは電池を交換する際に危険を伴うような産業機器の用途にも使用できるようになる。10μAオーダーでは数カ月から1年程度しかもたなかった電池寿命も、ADXL362を採用したシステムであれば数年から10年ほどに延びるという。その他、自宅で心拍数を計測するヘルスケア製品、放牧した家畜の動きを知るセンサーなど、常にモニタリングすることが望ましい用途なども想定している。
また、ADXL362には、「割り込み端子」が設けられており、これをシステム電源のオン/オフに利用することもできる。具体的には、加速度についてある閾値を設定し、それを超える加速度を検知すると割り込み端子がハイになり、システム電源を入れるスイッチをオンにする。その後、一定時間、静止状態が続くと割り込み端子がローとなってスイッチがオフになり、システム電源が切れる。この機能を用いることで、システム全体の消費電力を低減することが可能だ。この機能は、ADXL362が通常モード、あるいはウェイクアップモードで動作しているときに使用できる。
ADXL362のパッケージは、外形寸法が3×3.25×1.06mmの16端子LGAを採用している。現在サンプル出荷中で、2012年8月より量産出荷を開始する。1000個購入時の単価は3.97米ドルである。
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