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ウィーンブリッジ発振器が生まれ変わるDesign Ideas アナログ機能回路

ウィーンブリッジ発振器の唯一の問題点は、利得が1(ユニティ・ゲイン)以下では機能しないことだ。今回は、この課題を解決するアイデアを紹介する。

» 2013年09月19日 07時00分 公開
[Michael Fisch,Agere Systems]

 1938年、ウイリアム・ヒューレットとディビッド・パッカードは、ガレージから1つの製品を世に送り出した。その製品とはウィーンブリッジ発振器*1)である。それは極が1つの高域通過フィルターと極が1つの低域通過フィルターを直列接続して構成していた。この回路は利得を一定に保つために、白熱電球のパイロット・ランプを用いたAGC(自動利得制御)を使用していた。白熱電球の常として、パイロット・ランプは非線形な抵抗特性を示す。回路にスイッチを入れた直後は、ランプは冷えていて抵抗は低く、利得は高い。利得が増加するにつれて、ランプが暖まって抵抗が増加する。このため、ランプはAGCとして働く。この回路は60年以上も使われてきており、現在も利用されている。

*1)抵抗とコンデンサーを利用した発振回路の1つ。抵抗とコンデンサーで構成した帯域通過フィルターを利用して発振周波数を決定する。

 ウィーンブリッジ発振器の唯一の問題点は、利得が1(ユニティ・ゲイン)以下では機能しないことである。筆者が電話会社に勤務していたとき、20Hzの高電圧正弦波を利用した呼鈴回路を開発する必要があった。回路には20Vppから200Vppまで調節できることが要求された。難しかったのは、発振器の利得を1よりも低い値に調整しなければならなかったことだ。

 基本発振器は利得を1よりもわずかに大きくし、正帰還ネットワークによる発振を起こす必要があった。またAGCのループは、1よりも大きな利得を制御しなければならない。そこで発振器に第3のループを加え、電圧制御の安定化出力帰還回路を付けた。

 最終的には、図1に示す単純なプッシュプル回路となった。追加した帰還ループにツェナー・ダイオードD1を付加し、利得を1よりも低く調整しても振幅を一定値に保てるようにした。5.2Vのツェナー・ダイオードが利得を維持する。利得が1よりも下がると振幅が減少しようとする。しかし実際には小さくならない。ツェナー・ダイオードがプルアップするからだ。IC2は増幅器であり、2個の発光ダイオード(LED)のドライバーでもある。両方の発光ダイオードを発振器の周波数で交互に点灯させ、発振状態を表示する。IC1のオフセット電圧は極めて低い。IC3は高電圧増幅器であり、20V〜200Vの電圧を出力する。こうして、利得が1以下でも調整可能なウィーンブリッジ正弦波発振器を実現した。

図1 利得が1以下でも機能するウィーンブリッジ発振器
筆者によると利得が1以下でも機能するウィーンブリッジ発振器は初めてだという。

Design Ideas〜回路設計アイデア集

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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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