一方、数字の後ろに書かれている“CMOS”とは何でしょうか?
CMOSは(Complementary MOS; 相補型MOS)の略です。pチャネルとnチャネル のMOSFETを、相補形に配置したゲート構造のものをCMOSと呼びます。pチャネルMOSとはゲートに電圧が印加された場合にOFFするMOSでPMOSとも呼ばれます。nチャネルMOSは、ゲートに電圧が印加された場合にONするMOSで、NMOSとも呼ばれます。図3にCMOS回路、NMOS回路、PMOS回路で構成されたインバータ回路(論理反転回路)を示しました。
NMOS回路とPMOS回路では、MOSがオンした場合に抵抗とMOSを通って直流電流が流れてしまい、消費電力が大きくなるという欠点があります。その点、CMOSは必ずどちらかのMOSが(理論的には)オフしていますので、直流電流が流れません。その結果、低消費電力の回路になります。最近のマイコンのほとんどがCMOSプロセスで構成されています。
マイコンを製造するときは、ウエハーを枚葉処理します。そのため、1枚のウエハー上にいくつマイコンが載っていても、コストは一定です。すなわち1枚のウエハー上にはできる限り多くのマイコンを作り込む方がコスト低減につながります。図4にイメージ図を示します。ただし、実際はこんな単純な計算にはなりません。微細化でフォトマスクや製造ラインのコストは上がります。また、チップ(ダイ)にリード線を付けるボンディングパッドは機械的に大きさが決まっていますので、MOSだけが小さくなってもチップ(ダイ)サイズが極端に小さくなるわけではありません。しかし、全体的なコストは下がるというイメージだけ持っていただければ良いと思います。
一方、微細化すると、MOSのスイッチング速度が上がり、高速な回路が作れます(図5の上側)。しかし、OFFしているときに漏れ(リーク:Leakage)電流は大きくなり、マイコンの待機時電流が増えることになります(図5の下側)。また、外来信号の影響を受けやすくなり、ノイズに弱くなる場合があります。
このようにプロセスの微細化には一長一短ありますが、マイコンの開発者は、短所を補い、長所を生かす工夫をしていますので、最近では、微細プロセスのマイコンでも待機時電流が小さく、ノイズに強いマイコンになっています。
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