VFC(voltage to frequency con verter)と数個の安価な部品を使った、静電容量測定機能を実現する。
コンデンサーを使って回路を試作したり、古い壊れたコンデンサーを新品と交換したりするときに、コンデンサーの静電容量値を測定しなければならないことがしばしばある。コンデンサーに印刷された静電容量値が読めないこともあるし、許容範囲の広い仕様のコンデンサーだと、容量値はおおまかな精度でしか推測できないからだ。
このようなとき、通常はDMM(digital mul timeter)のLCRブリッジによる静電容量測定機能を利用する。すべてのDMMがこのような機能を備えているわけではない。LCRブリッジから容量を求めることは面倒なことである。
そこで、VFC(voltage to frequency con verter)と数個の安価な部品を使った測定回路を示そう(図1)。数nF〜数十μFの容量値を測れる。出力の周波数は下式で計算される。
ここで、VINの単位はV、R1とR2の単位はΩ、Cの単位はFである。
図1でIC1の入力電圧範囲は0〜10Vである。VFCの出力周波数は0.05%未満の非直線性誤差を持つ、0〜150kHzの周波数範囲の連続したパルス列に変換される。
通常の動作ではVFCに0〜10VまでのVINを与え、VIN/(R1+R2)によって電流が0〜1mAまでになるようなR1およびR2を選ぶ。VINとFoutの間に良好な直線性を得るためである。
しかし今回の回路設計ではVFCへの外部からの入力が存在しない。代わりに内部の基準電圧VREFを利用する。単純に、VREF出力をVIN入力に接続してやる。基準電圧源に負荷を与えないようにするため、バッファーを通じて接続してもよい。あるいは、電池などの外部定電圧源を使うこともできる。定電圧源を図1の点線のように接続する。
静電容量を測定するには、測定対象であるコンデンサーをVFCのAピンとA'ピンのすぐ近くで接続する。VIN=VREF=1.00VであってR1+R2を1kΩに調整した場合に、測定対象である容量CXに反比例した周波数のパルス列をVFCは出力する。
容量の測定範囲の調整には、トリマー抵抗であるR3とR2を利用する。1Hzの周波数出力が容量100μFに対応し、150kHzの出力が約0.6nFに対するように調整する。
測定範囲を広げたいときは、1MHzといったさらに周波数範囲の広いVFCを使用する。ただし、このときは寄生容量に注意すべきである。
図1で回路の出力を測定する方法はいくつか選べる。簡単でしかも直接的な方法は、簡単な周波数カウンター、あるいは周波数測定機能付きの安価なDMMを使うことである。また、米Intel社の「8524」などのパソコン拡張ボードとして入手可能なプログラマブル・カウンターも利用できる。
バッファーとコントローラーが必要になるものの、CD4040やCD4520などの簡単な16ビット・カウンターをプリンター・ポートに接続する方法もある。
なお、最後の2つの測定方法の場合は、特別なBIOS割込みを利用できる。正常なサービス・ルーチンに影響することなしに、パソコンのINT1Chに1秒間の測定ウインドウを設けられる。測定ウインドウの期間でVFCのシリアル出力がカウンターを駆動する。測定ウインドウが閉じたあとでカウンターの内容を転送し、データを処理し、パソコンのディスプレイに測定した容量値を表示する。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。
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