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DC-DCコンバーターのバックリップル電流対策DC-DCコンバーター活用講座(23) 入力および出力フィルタリング(1)(3/3 ページ)

» 2018年09月03日 11時00分 公開
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入力コンデンサーの選択

 上に示した例では、47μFのコンデンサーを使用してバックリップル電流を低減しましたが、この「47」という値はどこから来たのでしょうか。容量が大きいほどコンバーターに供給できるエネルギーも大きくなることは明らかで、容量の大きいコンデンサーは電極層間の内部表面積も大きいので、ESRが小さくなります。しかし、大容量の電解コンデンサーにはより広いボードスペースが必要で、価格も高くなります。従って、選択プロセスは、コンポーネント性能の影響を受けるのと同程度に、コストにも影響します。標準的な入力コンデンサーの値は22μF〜220μFの範囲なので、47μFという値は一般的かつ現実的な妥協値です。

 容量値よりも重要なのが、コンデンサーのリップル電流定格です。コンデンサーに流れるAC電流は熱を発生させます。コンデンサーの温度が規定された限界を超えると、コンデンサーの寿命が大幅に低下します。極端な場合は、電解液が沸騰してたちまち故障してしまいます。

 コンデンサー内のACリップル電流を測定することは非常に困難です。これは、測定用のシャント抵抗を直列に接続すると、結果に大きく影響するからです。外付けコンデンサーなしの状態でバックリップル電流を測定し、次にコンデンサーを追加して再度測定を行えば、これら2つの測定値の差が、コンデンサーを流れるリップル電流です。

 あるいは、コンデンサーのESRとコンバーターの動作周波数fが分かっている場合は、ラインインピーダンスZLによる残留電圧リップルを測定して、次式によりリップル電流を計算することができます。

式1:コンデンサーのリップル電流の計算

 コンデンサーのデータシートには、最大リップル電流の仕様が記載されています。制限要素は、コンデンサー内部の消費電力による温度上昇です。リップル電流によりコンデンサー内で損失する電力は次式で表されます。

 この式から得られる温度上昇値は次の通りです。

式2:リップル電流によるコンデンサーの温度上昇の計算

 ここでkAはコンデンサーの熱伝導率で、熱インピーダンスkに表面積Aを乗じたものです。熱伝導率の単位は℃/Wです。

実用的ヒント

 バックリップル電流の測定は容易ではないので、コンデンサーの温度を測定して、温度上昇からリップル電流を求めた方が簡単なこともあります。


並列接続したたDC-DCコンバーターの入力電流

 アプリケーションによっては、1つの1次電源に複数のDC-DCコンバーターを並列に接続しなければならないことがあります。最も一般的なのが、POL(Point-of-Load:負荷点)電源システムと冗長(N+1)電源システムです。それぞれのDC-DCコンバーターは個別にバックリップル電流を発生させ、これらの電流が全体的な電流負荷に加わります。

 公称スイッチング周波数が100kHzの同じDC-DCコンバーターを2個使う場合を考えます。製造時の許容差によって、一方の周波数が100kHz、他方が120kHzという場合も考えられます。FFT解析を行えば、100kHz、120kHzおよび差分20kHzの3つの周波数が現れます。この低周波クロス干渉、あるいはビート周波数は、フィルターによる除去が極めて困難です。

図8:ビート周波数干渉 出典:RECOM(クリックで拡大)

 ビート周波数干渉は、各DC-DCコンバーター入力を個別にフィルタリングすることによって回避できます(図9)。LCフィルターは、コンバーター間のビート周波数干渉をブロックします。インダクターは大量のDC電流を通さなければならないので、Lの値はかなり低い22μH〜220μHが標準的な値です。さらに、1次電源の入力間にコンデンサーを取り付ける必要もあります。LCローパスフィルターのフィルタリング効果は双方向性なので、さらに干渉を減少させるためにCMAIN−L−Cによって形成されるπフィルターが使われます。

図9:ビート周波数干渉のフィルタリング 出典:RECOM(クリックで拡大)

実用的ヒント

 入力コンデンサーC1とC2は、コンバーターの入力ピンのできるだけ近くに配置することが重要です。コンデンサーとコンバーター間のPCB配線は、それが非常に短いものであっても、フィルターの効果を損ないます。共通VIN−接続はできるだけ幅広く、インピーダンスを低くする必要があります。接続は、クロス干渉によるそれ以上の影響を避けるために、全て1次電源端子に集める必要があります(スターポイント)。



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執筆者プロフィール

Steve Roberts

英国生まれ。ロンドンのブルネル大学(現在はウエスト・ロンドン大学)で物理・電子工学の学士(理学)号を取得後、University College Hospitalに勤務。その後、科学博物館で12年間インタラクティブ部門担当主任として勤務する間に、University College Londonで修士(理学)号を取得。オーストリアに渡って、RECOMのテクニカル・サポート・チームに加わり、カスタム・コンバーターの開発とお客様対応を担当。その後、オーストリア、グムンデンの新本社で、RECOM Groupのテクニカル・ディレクタに就任。



※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。

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