このシンプルなアンプおよび、アンチエイリアスフィルターの解析では、特に意識せず、シグナルチェーンのENBWを確定するのに用いるソースを2つ定義しましたが、フィルタリングソースが多数存在する設計もありますし、どの設計にも少なくとも何らかのフィルタリングが存在します。従来のフィルター機能を持たないプリント配線板(PCB)であっても、配線のインピーダンスや並列配線の容量があります。これらの寄生容量から意図しないRCフィルターが作られるかもしれません。このフィルターの帯域幅が非常に大きく、そのため全体的なENBWにほとんど影響がないとしてもです。
図6は、代表的なデータ収集システムによく見られるフィルタリングソースを表したものです。電磁干渉(EMI)フィルターなどの外部フィルター、アンプの帯域幅、アンチエイリアスフィルター、デルタ-シグマADCのデジタルフィルターのほか、マイコンやFPGA内にデジタル的に作られた後処理フィルターが加わることもあります。重要なのは、どのシグナルチェーンにもこれらのフィルタリングソースがすべてあるわけではないことです。例えば、デルタ-シグマADCをベースとした多数のデータ収集システムでは、これらのADCにフィルターが内蔵されているため、後処理フィルターは不要です。
シグナルチェーンにフィルター部品が複数ある場合、シグナルチェーンの中の下流にあるフィルターをすべて組み合わせて各部品のENBWを算出しなければなりません。例えば、図6のアンプのノイズ要因を計算するには、アンプの帯域幅をアンチエイリアスフィルター、ADCのデジタルフィルター、後処理フィルターと組み合わせる必要があります。ただし、EMIフィルターは無視できます。
幸いにも、1つの回路にフィルタリングソースが多数あっても、全体的なENBWに大きく影響するのは一部の種類のフィルターです。ですので、必要なのはこのような部品のENBWを計算することだけで、それ以外のフィルタリングソースは無視できるかもしれません。例えば、低い出力データレートでは、通常はデルタ-シグマADCのデジタルフィルターの帯域幅がシグナルチェーンで最も狭く、ENBWに対して支配的になります。逆に、広い入力信号帯域幅で高い出力データレートを用いると、一般的にアンチエイリアスフィルターがシステムのENBWを制限します。
ENBWについてさらに理解するために、次回では、実世界のシステムにENBWをどう当てはめるかをシンプルな例を使って説明します。
以下は、デルタ-シグマADC内のノイズをより良く理解する上で重要なポイントをまとめたものです。
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