シンプルなのになぜ!? 短期間で故障を繰り返す電源【前編】:Wired, Weird(2/2 ページ)
不良が再発した現物を受領し、不良箇所を確認した。図3に示す。
図3:不良再発後のコンデンサー実装部分 (クリックで拡大)
図3の右側2個の電解コンデンサーの下部(赤枠)がまたボトムアップして、2つの電解コンデンサーの容量がゼロになっていた。背面の放熱板には5V整流用のSBDが実装されており5Vの出力電流が過電流になって放熱板が過熱していると思われた。放熱板の温度を下げるために右側に放熱板を追加した。図4に示す。
図4:再修理後の基板 (クリックで拡大)
電解コンデンサーはボトムアップした2200μF品よりさらに容量が大きい3300μF品に交換した。また、放熱板と電解コンデンサーの距離を確保するため電解コンデンサーを前方に傾斜させて実装した。これで対策は完璧だと思い自信を持って納品した。しかし、それから半年後にまたまた不具合が再発した――。
なぜ、こんなシンプルな電源で不良が再発するのだろうか――。修理品の保証期間は3カ月ではあるのだが、本質的な原因を究明したくなり無償で再々修理を行うことにした。
なお、図4中央にある24V用の電解コンデンサーの不良は発生していない。ここに原因を見極める鍵がありそうだ。
再々修理を行ってようやく真の原因を究明できたのだが、真の不良原因は基板の外側に隠れていた。その様子は次回、詳細に報告する。
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