電解液でひどく腐食した片面基板の修理【前編】:Wired, Weird(2/2 ページ)
ハンダ面の腐食が進んでしまっているので、少し手を加えただけではパターンやランドが剥がれてしまうだろう。依頼者へはハンダ面のランドに鉛ハンダを追加し、ハンダが溶ける温度を下げて、あまり熱や力を加えずに、部品を取り外すようアドバイスした。それからほどなく『電解コンデンサーは取り出せた』と依頼者から返答があった。コンデンサーを取り外した写真を図3に示す。
図3:コンデンサーを取り外した様子 (クリックで拡大)
図3をみると漏れた電解液が図3上の方にまで広がっているのが見えた。抵抗の中に電解液が入ると抵抗が断線することがある。図3上の方の部品も点検する必要があるだろう。
次はレギュレーターを外す作業になる。ここでも、ランドにストレスを加ないようにレギュレーターのリードを切ってから基板から外すようにと助言した。しかし『レギュレーターのリードを切っただけでパターンが剥げてしまった』と連絡があった。送ってもらった写真を図4に示す。
図4:パターンが剥げてしまった様子 (クリックで拡大)
図4で剥がれたパターン部を赤枠で囲った。基板の保護膜であるレジストが漏れた電解液で溶かされ、パターンの密着力はほとんど無かった。依頼者はかなり緊張して作業を行っていたらしくパターンが剥げた時点で修理作業をギブアップし、「筆者に基板を修理してほしい」と連絡があった。片面基板で強アルカリの電解液が基板上に広がっており、修理作業はかなり難しくなる。かなり丁寧な作業が必要な修理だ。依頼者には負担が重すぎると判断できたので、修理依頼を受け入れた。
数日後に依頼者から機器が届いた。取り外された電解コンデンサーも一緒に送られてきたので、マルチテスター「LCR-T4」で確認した。写真を図5に示す。
図5:マルチテスターで電解コンデンサーの容量、ESRを確認 (クリックで拡大)
図5のように電解コンデンサーは容量が1035μFでESRは8.2Ωだった。電解コンデンサーの容量は減っていなかった。レギュレーターを測定したら入力−GND間が132Ωで短絡破損していた。電解コンデンサーから微量な液漏れが発生し、端面からハンダ面に電解液が回り込んで徐々にパターンの銅箔が腐食。レギュレーターの出力とGNDが短絡してレギュレーターが熱破損したと想定される。
この修理の続きは次回(後編)に報告する。
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