ハンダ面の腐食が進んでしまっているので、少し手を加えただけではパターンやランドが剥がれてしまうだろう。依頼者へはハンダ面のランドに鉛ハンダを追加し、ハンダが溶ける温度を下げて、あまり熱や力を加えずに、部品を取り外すようアドバイスした。それからほどなく『電解コンデンサーは取り出せた』と依頼者から返答があった。コンデンサーを取り外した写真を図3に示す。
図3をみると漏れた電解液が図3上の方にまで広がっているのが見えた。抵抗の中に電解液が入ると抵抗が断線することがある。図3上の方の部品も点検する必要があるだろう。
次はレギュレーターを外す作業になる。ここでも、ランドにストレスを加ないようにレギュレーターのリードを切ってから基板から外すようにと助言した。しかし『レギュレーターのリードを切っただけでパターンが剥げてしまった』と連絡があった。送ってもらった写真を図4に示す。
図4で剥がれたパターン部を赤枠で囲った。基板の保護膜であるレジストが漏れた電解液で溶かされ、パターンの密着力はほとんど無かった。依頼者はかなり緊張して作業を行っていたらしくパターンが剥げた時点で修理作業をギブアップし、「筆者に基板を修理してほしい」と連絡があった。片面基板で強アルカリの電解液が基板上に広がっており、修理作業はかなり難しくなる。かなり丁寧な作業が必要な修理だ。依頼者には負担が重すぎると判断できたので、修理依頼を受け入れた。
数日後に依頼者から機器が届いた。取り外された電解コンデンサーも一緒に送られてきたので、マルチテスター「LCR-T4」で確認した。写真を図5に示す。
図5のように電解コンデンサーは容量が1035μFでESRは8.2Ωだった。電解コンデンサーの容量は減っていなかった。レギュレーターを測定したら入力−GND間が132Ωで短絡破損していた。電解コンデンサーから微量な液漏れが発生し、端面からハンダ面に電解液が回り込んで徐々にパターンの銅箔が腐食。レギュレーターの出力とGNDが短絡してレギュレーターが熱破損したと想定される。
この修理の続きは次回(後編)に報告する。
80年代末期の“亡霊”に注意、現代の修理業務でも遭遇率高し
シンプルなのになぜ!? 短期間で故障を繰り返す電源【前編】
ありがちな故障と思ったら…… ステッピングモータードライバーの修理【前編】
SMTリレーよ、お前もフラックスに弱いのか!
作る側の常識、使う側の非常識Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング