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セラミックキャパシター(4) ―― 温度特性中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(48)(4/4 ページ)

» 2020年10月29日 11時00分 公開
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(参考)EIA規格によるクラスI キャパシターの表示法

 以前、日本の業界規格(JEITA)が参考にしていた米国のEIA RS-198規格では、クラス1のセラミックキャパシターの温度特性を示す3文字のコードでコード化していましたが現在ではJIS-C-5101-21:2014などでIEC規格と調和が進められ国内では公的規格から外れてきています。以下の説明はあくまでも現存する部品の読み方を紹介するものです。

 最初の文字は、容量の温度特性αを10-6/K単位で指数表示した時の仮数部を指す文字コード、2桁目の数値はその乗数に関係する数値です。また3桁目の文字はαの最大偏差を10-6/Kで表す文字コードです。このEIAの場合には温度特性は+25℃〜+85℃の2点の温度で規定されていて、この区間で実測された温度係数を基に以下のように-55℃時の限度値を計算します。

1)+側偏差上限値
  規定された+偏差を適用します。上限値=公称温度係数+(+偏差)

2)-側偏差下限値
  下限値=公称温度係数+(-偏差)
  -偏差は次の計算式で求めます(この式はIEC/JISの計算式と同じ内容です)。
  -偏差=-36-1.22×(+偏差)+0.22×(公称温度係数)
     EIA定義:温度係数(10-6/K)での定義
     IEC/JIS定義:容量変化率(1/1000=パーミル=千分率)での定義

表3:(参考)EIA-RS-198による温度特性αの文字コード (クラスI)
1桁目 2桁目 3桁目
温度特性 α(10-6/K)
文字コード
αの乗数の数値コード 温度特性の偏差(10-6/K)
文字コード
C: 0.0 0:−1 G:±30
M: 1.0 1:−10 H:±60
P: 1.5 2:−100 J:±120
R: 2.2 3:−1000 K:±250
S: 3.3 4:-10000 L:±500*
T: 4.7 5:+1 M:±1000*
U: 7.5 6:+10 N:±2500*
(V:5.6) 7:+100  
(B:0.3) 8:+1000  
(L:0.8) 9:+10000  
(A:0.9)    
()は参考記号
*このクラスの偏差にはメーカーオプションとして非対称偏差も許容されます

 例えばP7H特性やU2J特性の実際の温度特性は次のようになります。

表4:EIAコードの読み方の例
P7H特性 U2J特性
1文字目 P 仮数部1.5 U 仮数部7.5
2文字目 7 +100 2 -100
3文字目 H ±60×10-6/K J ±120×10-6/K
公称温度特性
(+25〜+85℃)
1.5×100±60=150±60 (10-6/K) 7.5×(-100)±120=-750±120 (10-6/K)
-55℃時+側偏差
(上限値)
+60
+150+60=+210 (10-6/K)
+120
-750+120=-630 (10-6/K)
-55℃時ー側偏差

(下限値)
-36-1.22×(60)+0.22×(150)
=-36-73.2+33=-76.2
+150-76.2=73.8 (10-6/K)
-36-1.22×(120)+0.22×(-750)
=-36-146.4-165=-347.4
-750-347.4=-1097.4 (10-6/K)


執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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