測定器がデジタル化したことによって得られるメリットとして、測定結果が数値データとなり、容易に演算が行えることがある。演算をすることにより測定結果から必要な情報を見やすい形に変換できる。
TBS2000Bの場合は各入力で測定した結果を加算、減算、乗算できるだけではなく、FFT演算を行って周波数分析ができる。
TBS2000Bで波形データの加算、減算、乗算を行う機能は、パネルにある演算(Math)キーを押して呼び出す。画面上にあるソース1(Source 1)、演算子(Operator)、ソース2(Source 2)の順で設定して演算を決めていく。
入力間の乗算演算は、パワーデバイスのスイッチング測定を行う場合に使われる。チャンネル1の入力でデバイスのドレインとソース間の電圧、チャンネル2の入力でデバイスに流れる電流を測定して乗算をすることによって損失電力を求める。
オシロスコープに取り込んだ波形データにFFT(Fast Fourier Transform)演算を行って、波形が持つ周波数成分を観測できる。FFT演算を用いた周波数分析は、機械振動や音響の分野ではFFTアナライザーとセンサーを組み合わせて行われる。電気信号の波形を観測することが主な用途であるデジタルオシロスコープやメモリレコーダーでもFFT演算機能を持っているので周波数分析はできるが、FFTアナライザーとは機能や性能で異なるところがあるので利用する際には注意が必要である。詳しくはTechEyesOnlineの「FFTアナライザの基礎と概要(第1回)」にある表2に示されている。
TBS2000BでFFT演算を行う場合は、パネル上にあるFFTキーを押して設定画面を呼び出す。
FFT演算の設定画面では下記の設定ができる。
FFT演算した周波数分析の結果からデータを読み出す場合は、下図のようにカーソル機能を使う。
オシロスコープを使ってFFT演算する場合は折り返し(エリアシング)による影響を受けることを知っておく必要がある。日本機械学会のWebサイトにある「機械工学辞典」の解説を引用すると下記のようになる。
サンプリング周波数をfsとすると、サンプリング定理から、分析可能な最高周波数fmaxは、例えばfsを1000Hzとするとその2分の1の500Hzとなる。このとき、解析原信号のうちにfmaxを超える700Hzの成分が含まれていると、ちょうどfmaxの500Hzを対称軸として折り返した300Hzの位置に架空のピークが現れる。このような現象を折り返し現象と呼ぶ。
折り返しを生じさせないためには、入力信号に分析可能周波数以上の信号が入力されないようにするためローパスフィルターを用いるのがよい。TBS2000Bには入力回路に20MHz帯域制限フィルターがあるので、これを使って折り返しの影響を除去できる場合がある。
その他の方法としては、サンプリング周波数を上げて折り返しの影響をなくす方法はあるが、幅広い周波数帯域を分析する場合はレコード長に制限があるので注意が必要である。
ロジックICは低消費電力化、高速化のために電源電圧を下げていることから、下図に示すようにノイズマージンは小さくなる。このため、機器の設計では信号にノイズが重畳しないように工夫を行い、評価ではロジックICに影響を与えているノイズの性質を見極める。
ノイズの評価は主にオシロスコープを使って行い、波形の形状とノイズの周波数成分を見てノイズ発生の要因を突き止めて対策を行う。ノイズの周波数成分はスペクトラムアナライザーによっても観測できるが、スペクトラムアナライザーは高周波信号の観測用の測定器であるため、低い周波数成分の観測はできない。インバーなどの低周波ノイズを発生する機器からのノイズは、FTT機能を使わないと分らないことがある。低周波から高周波までの周波数分析ができるオシロスコープのFFT機能は、ロジック回路のノイズ評価に有効である。
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