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電磁気学入門(9)フォワードコンバーターのトランス設計DC-DCコンバーター活用講座(52)(4/4 ページ)

» 2024年04月09日 11時00分 公開
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 出力インダクターは、出力コンデンサーへのACリップル30%を許容しなければなりません。高電力設計では、大きなインダクターと小さなコンデンサーがコンデンサーのACリップルストレスを減らすのに都合が良く、10〜20%のリップル値が選択されます。

 リップルのワーストケースは、デューティサイクルが最大のときで、出力インダクターは少なくても以下の計算以上である必要があります。

<strong>式6:出力インダクターの計算</strong> 式6:出力インダクターの計算

 出力コンデンサーの算出は、電磁気学入門(7)降圧コンバーターの設計事例や損失計算で示した降圧コンバーターの式3と同じです。

 フォワードコンバーターに使用するダイオードは、リセット巻き線に1個、出力整流用に2個の計3個です。デューティサイクルが50%以下の条件では、導通時に二次側の各ダイオードは交互に出力電流を流します。二次側ダイオードそれぞれに等価連続電流は、出力電流を√2で除算した値で、この設計例では約0.7Aになります。

実用的ヒント

 二次側ダイオードは、それぞれがデューティサイクルに依存する等価RMS出力電流を流せる定格が必要です(別の言い方をすれば、各ダイオードが出力電流の50%だけを流すと考えてはいけない)。全出力電流を流せるダイオードを、両方に選択することが良い設計につながります。高出力電流時の出力ダイオード損失を低減するのには、ショットキーダイオードか同期整流を使います。

 出力ダイオードは、ピーク逆電圧にも耐えられる必要があります。

<strong>式7:二次側ダイオードの逆耐電圧の計算</strong>係数1.5は電圧リンギングを許容し多少の余裕を与える 式7:二次側ダイオードの逆耐電圧の計算係数1.5は電圧リンギングを許容し多少の余裕を与える

 リセット巻き線に使うダイオードの電力消費は通常大きくはありませんが、少なくとも最大入力電圧の倍になるピーク逆電圧に耐える定格である必要があります。

実用的ヒント

 リセット巻き線ダイオードは、低い順方向電圧と十分な逆電圧定格(通常Vinmaxの2.5〜3倍)をもつパワーダイオードでなければなりません。逆回復時間の速度は重要ではありません。

⇒「DC-DCコンバーター活用講座」連載バックナンバーはこちら


執筆者プロフィール

Steve Roberts

Steve Roberts

英国生まれ。ロンドンのブルネル大学(現在はウエスト・ロンドン大学)で物理・電子工学の学士(理学)号を取得後、University College Hospitalに勤務。その後、科学博物館で12年間インタラクティブ部門担当主任として勤務する間に、University College Londonで修士(理学)号を取得。オーストリアに渡って、RECOMのテクニカル・サポート・チームに加わり、カスタム・コンバーターの開発とお客様対応を担当。その後、オーストリア、グムンデンの新本社で、RECOM Groupのテクニカル・ディレクタに就任。



※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。

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