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ビルのデジタル化を加速する 「シングルペアイーサネット」の役割とは?ネット・ゼロ達成の鍵(4/5 ページ)

» 2024年05月20日 11時00分 公開

通信の改善

 冷暖房システムは、サーモスタット、コントローラー、エア・ハンドリング・ユニット、可変風量ユニットといった複数のコンポーネントによって構成されます。設定された通りの温度を実現するためには、それらのコンポーネントの間で情報を交換する必要があります。その際、高い通信レートを使用できれば、システムのデータスループットが大幅に向上します。つまり、9.6kbps〜115.2kbpsといった一般的なシリアルボーレートではなく、帯域幅が10Mbpsのイーサネットを採用できる方が望ましいということです。実際、IPをベースとする高速通信を採用すれば、以下に説明するような重要なメリットが得られます。

  • サンプリングではなく分析

 旧来の通信方式には、データレートが低いという欠点がありました。そのため、ビルの管理者は、どのデータを収集するのかという優先順位を定めると共に、収集したデータをサンプリングする必要がありました。一方、シングルペアイーサネットを採用すれば、管理者はシリアル通信のサンプリングレートについて気を遣う必要がなくなります。システムから収集できる追加のデータを活用する、より高度かつ多様な分析手法の開発に集中することが可能になります*14)

  • エネルギー消費量の節減

 追加で取得したデータを活用することにより、モデルやリアルタイムのセンサー入力を利用する高速な制御ループ、計算集約型のエネルギーの最適化手法などを適用できるようになります。それにより、エネルギー消費量をさらに節減できます。

  • データの集約 - データのサイロ化を解消する

 旧来の有線シリアル通信では、クラウドにデータを引き渡すためにゲートウェイを使用する必要がありました。つまり、エッジ・デバイスで取得したデータをイーサネットベースのパケットに変換しなければならないということです。それに対し、有線のシリアル通信リンクをシングルペアイーサネット(10BASE-T1L)にアップグレードすれば、既存のケーブルを再利用すると共に、ゲートウェイを排除することができます。つまり、ゲートウェイのコストや全体的なレイテンシを抑えることができます。また、データのサイロ化を回避したり、障害が発生する可能性のある箇所を減らしたりすることが可能になります。

  • リアルタイムの応答性

 ゲートウェイを使用する場合、その上で動作するソフトウェアと通信プロトコルによって、応答時間が数秒のレベルまで長くなります。一方、IOモニタリングをはじめとするビル・オートメーションのアプリケーションでは、レイテンシを100ミリ秒以下に抑えなければならないため、シングルペアイーサネットを採用すれば、より高いスループットが得られるだけでなく、ゲートウェイが不要になります*13)。それらの効果により、スループットが向上し、システムのリアルタイム応答を実現できるようになります。

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