電磁気学入門講座。今回は、整数巻き数と端数巻き数について解説します。
1出力の単純なトランス設計では、一次側および二次側の巻き線比は簡単に整数の巻き数にすることができます。しかし、複数出力のトランスでは、巻き線比の計算は複雑になります。
例えば、事例の5Vフライバック設計に1.5Vの補助電源追加したい場合、以下の巻き数の巻き線を追加します。
しかし、どうやって半分だけ巻くのでしょうか? この方策にはEEコアを使います。中心の周りに巻く代わりに、コアの一方の脚の周りに1回巻きたします。磁束はコア全体にわたって対称に分かれているので、1本の脚には半分、もう一方にも半分が流れ、1本の脚に対する1巻きは半巻きに値します。
トランスの実効出力は単純に一次側と二次側の巻き線比に依存するという簡略化した考え方は、実際とはかけはなれています。漏れインダクタンスと巻き線静電容量は、必要なスイッチングエネルギーとともに出力に転送され、電圧スパイクの原因になります。過剰な出力電圧スイッチングスパイクは、二次側ダイオードによって整流され、出力電圧に追加されます。この過剰電圧の量はトランス設計によって変わらず、その影響は、高い負荷電流が過剰エネルギーを高速に放電する役目をする高負荷時より、低負荷またはゼロ負荷時の方が顕著です(図2参照)
一次側の電流スパイクと電圧スパイクはどちらも同様に厄介で、コアと巻き線の損失を増加させ、スイッチングトランジスタ、場合によってはクランプ回路部品にもストレスを与えます(図3aおよびb)。下図は、寄生インダクタンスと巻き線静電容量が、一次側スイッチング波形に与える影響(同様にトランス出力に折り返される)を示しています。
漏れインダクタンスを低減する最良の方法は、巻き線を交互配置することです。これは、近接効果を低減し、巻き線層間の漏れインダクタンスの影響を相殺する連続層を可能にします。しかしながら、交互配置は巻き線静電容量を増加させます。従って、漏れインダクタンスと巻き線静電容量は相反する関係になります。漏れインダクタンスを減らすと、巻き線静電容量が増加します。逆もまた同じです。巻き線静電容量が大きい場合は、共振効果(エッジのリンギング)、過剰な電流スパイクによる一次側の損失増加、コアと巻き線間の静電結合などの問題を誘発します。
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※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
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