TDKは、2.5GHzで3000Ωというインピーダンスピークを持たせた信号伝送回路用チップビーズインダクタ「MMZ1005-Vシリーズ」を発表した。「2.5GHz帯として業界最高水準のインピーダンス」(同社)としている。
TDKは2013年9月3日、2.5GHzの高周波帯でインピーダンスピークを持たせた信号伝送回路用チップビーズインダクタ「MMZ1005-Vシリーズ」を発表し、2013年9月中に量産を開始する。2.5GHzでのインピーダンス値3000Ωを実現し、TDKでは「2.5GHz帯として業界最高水準のインピーダンス」としている。
チップビーズインダクタは、信号伝送回路中のノイズ成分を取り除くデバイスで、高周波信号を扱うスマートフォンなどの移動通信端末で使用される。インピーダンス値が高いほど、ノイズ除去性能も高くなる。
昨今のスマートフォンなどの移動通信端末は、主に2GHz以下の無線周波数帯を使用するGSMなどの通信に加え、LTEやWi-Fiなど2〜2.7GHzといった比較的高い周波数の無線、信号を多く扱うようになっている。そのため、2GHzを超える高周波帯域でのノイズ対策の必要性が高まっている。
しかし、ビーズインダクタは、インダクタンス値のピークが1GHz前後の製品が多く、2GHzを超える高周波帯で高いインピーダンスを実現する製品は少なかった。ビーズインダクタのインピーダンスピークを高周波帯に持たせるためには、端子電極と内部電極(コイルと端子電極をつなぐ電極)の間に生まれる浮遊容量を低減させることが必要になる。
そこで、ビーズインダクタメーカー各社は、従来は実装基板に対し垂直方向に積み上げていたコイルの巻き線方向を、水平方向にして、内部電極の数を減らしつつ、端子電極と内部電極の距離も離して、浮遊容量を抑える構造を採用して高周波対応品の開発を進めてきた。TDKもこれまでも、浮遊容量を減らすことのできるこのコイルを寝かせたような構造を「ギガスパイラ構造」と名付け、高周波対応チップビーズに適用してきた。
ただ、このギガスパイラ構造のチップビーズ製品もインピーダンスピークが1.3GHz程度にとどまり、「コイル構造の改良だけで2GHzを超える高周波帯にピークを持たせるには限界があった」(TDK)という。
インピーダンスピークの高周波化するための方法として、浮遊容量の低減とともに、コイルの磁性体の誘電率を抑えるという方法が存在するが、磁性体の誘電率を低減させることは難しく、磁性体の誘電率低減によるピークの高周波化というアプローチはあまり取られてこなかった。その中で、TDKは、磁性体に関する豊富なノウハウを駆使し、低誘電率の磁性材料を開発し、ギガスパイラ構造とともにチップビーズインダクタに適用した。
その結果、2.5GHz帯でインピーダンスピークを持たせることに成功。さらに、ピークで3000Ωという高いインピーダンス値を達成し、「2GHzを超える周波数帯でインピーダンスピークを持つ他社製品に比べて、大幅に高めることができた」(TDK)とする。
新製品は、2.5GHz帯以外の広い周波数帯域で、高いインピーダンスを実現しているという特徴も併せ持つ。従来は、1GHz帯前後から2GHzを超える帯域までのノイズ対策として、ピークが1GHz前後にあるチップビーズを複数個使用して対応したり、1GHz帯ピークのチップビーズと、2GHz帯以上の高周波帯での対策に特化したセラミックコイルを組み合わせて対応したりしていたが、「1個の新製品で対応できるようになる」(TDK)という。
MMZ1005-Vシリーズは、2.5MHz時のインピーダンス値3000Ωを実現した「MMZ1005AFZ181V」(直流抵抗最大1.60Ω/定格電流150mA)の他、「同AFZ151」(2.5Hz時インピーダンス2500Ω/直流抵抗最大1.30Ω/定格電流200mA)、「同AFZ750」(2.5GHz時インピーダンス1400Ω/直流抵抗最大0.90Ω/定格電流250mA)をラインアップしている。いずれも大きさは1005サイズ(1.0×0.5×0.5mm)。サンプル価格は10円となっている。
なお、TDKは、2013年10月1〜5日の5日間、千葉・幕張メッセで開催される最先端ITとエレクトロニクスの総合展「CEATEC JAPAN 2013」の同社ブース内で、MMZ1005-Vシリーズの展示を行う予定だ。
会期 | 2013年10月1日(火)〜5日(土) |
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時間 | 10:00〜17:00 |
会場 | 千葉・幕張メッセ |
TDK | ブースNo.:1A11 |
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