次はメイン電源の確認だ。外部装置との接続用にI/Fコネクタがありメイン電源の出力電圧が調整されているようだ。依頼元へ質問したら電圧出力をコントロールするコネクタだった。このコネクタにはGND、DC15V、DC12Vが出力されていた。外部装置からメイン電源を制御する信号があるはずだ。メイン電源を制御するICは富士通製の「MB3578」だった。ICの誤差アンプ端子からパターンを追いかけて、外部I/Fと接続するコネクタのピン番号が分かった。
AC100Vを通電して15V出力と外部からの入力FBピンを接続したらメイン電源からDC27Vの電圧が出た。依頼元へ状況を報告したらDC24Vに調整するように指示された。ボリウムを調整して24Vに設定した。本来ならこれで修理完了だ。修理した電源を依頼元へ送った。
依頼元から“電源を実装したが、うまく動作せずランプが点灯しない”という連絡が来た。電源単品で確認するため、外部接続コネクタを直接15Vに接続して出力電圧を確認するように連絡した。その後の確認は依頼元に任せるしかなかった。
数カ月後、依頼元から連絡があり、「装置に実装しても動作しないので修理は未完了で、他の修理業者へ依頼する」という連絡があった。予想した結果ではあったが、修理の仕事ではよくあることだ。この電源は危ない電源なので、かえって他へ頼んでもらった方が良かったかもしれない。
さて、電源が破損する理由を整理してみよう。
図5の回路図からRCC電源のトランジスタのベース回路でトランス出力の回路に電流制限抵抗が入っていない。このためトランジスタのベースに過電流が流れ、D5とD6は過電力になり、これで基板と部品が黒く焼けてしまった。トランジスタのコレクタには直流抵抗が4Ω程のトランスがありトランスはDC280Vに接続されていた。流れる電流は20A程度と推定できるので、トランジスタには30W程度の電力がかかっていた。
この回路の最大の問題点は2次側のフィードバック信号がないことだ。このため、2次側に実装された電解コンデンサの耐圧は25Vであったが、恐らく倍以上の電圧が出力されていたと思われ、2次側の電解コンデンサも劣化していた。
この回路のままでは最終顧客で2次側の電解コンデンサの破裂事故が多発していたこと推測される。恐らく最終顧客で電源の焼損や電解コンデンサの破裂事故が問題になり、電源メーカーは賠償問題に対応できず、この業界から身を引いたのではないかと勘繰られる。この危険極まりない電源を修理して、万一、火災でも起こしたら大変だ。
電源は設備の性能と安全を保証する基本部品であり、しっかりとした設計評価と信頼性の確認が求められる。その後、半年以上経過したが、依頼元からは何の連絡もない。
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