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サーミスタ(2) ―― NTCサーミスタによる突入電流制限回路の注意事項中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(12)(3/3 ページ)

» 2017年10月30日 11時00分 公開
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その他の不良例

  • 繰り返しのAC投入ではNTCサーミスタの原理上、電流の制限ができません。サーミスタが高温のままAC投入を行うと過大な突入電流で機器がダメージを受ける可能性があります。
  • 電流ヒューズの定格値と機器の異常時に流れる過電流のバランスによっては過電流が流れ続ける場合があります。この過電流によってサーミスタが異常発熱する場合は温度ヒューズなどの対策が必要です。
  • 過大な負荷電流に対して放熱を改善して温度上昇を低減しても限度を超えると熱暴走を引き起こす可能性があります。
  • 突入電流制限用NTCサーミスタは防水構造ではありませんので結露するとイオン・マイグレーションが発生する可能性があります。
  • ネジ止め型の場合には既定のトルク以下で締め付けてください。締め付け方法はメーカー保証の方法が規定されている場合があります。
  • 基板上に取り付けた場合、機械的共振で過大なストレスがリード部に掛かり、リードが破断する場合があります。
  • 保管については一般電子部品の保管環境を順守してください。

エポキシ樹脂のディップ塗装について

 ディスク形状の電子部品はその外装にディップ工法によるエポキシ塗装が多く用いられています。電子部品を素体として完成させた後に微粉末あるいは液状のエポキシ樹脂に浸し、引き上げ後に乾燥、固化を行い、最終的に完成させているのですが、ディップ時に圧力が掛かっていないので塗膜の中にボイド(空隙)が残るのは避けられません。

 このようなボイドは穴が開けば外観検査による検出や複数回のディップ塗装での補修が可能なのですが、薄い膜を張った形態でボイドが残った場合はこのような検出や補修を行うことができません。
 また、耐圧検査は破壊検査ですから検査後の絶縁能力は必ず検査前に比べて低下します。したがって部品としての検査を「PASS」したからと言って、製品に組み込んだ後の耐圧検査を「PASS」できるとは限りません。各安全規格試験所でエポキシ樹脂のディップ工法を絶縁システムとして認めていないのはこのような工法上の課題によるものなのです。

*:トランスファーモールドなどの成型工法は圧力を掛けて成型しますので樹脂成型品の実績と併せて考えるとボイド残りはないと考えられています。

 次回は説明をしてこなかったNTCサーミスタの残りの用語とNTCサーミスタによる温度検出回路について説明したいと思います。

執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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