図1に内部構造図と駆動状態を示しますが小信号用リレーとしては一番汎用的なタイプで、何も指定せずに「リレー」という時はこのタイプを意味している場合がほとんどです。
磁気回路を構成する鉄芯、継鉄、接極子は鉄系の軟磁性体1)で構成されており、比透磁率μSは10,000を超える材料が使われます。接極子はカードを介して接点を駆動するアクチュエーター2)を構成します。
1)軟磁性体とは外部からの励磁がなくなった場合に内部磁束がなくなるタイプの磁性体を言い、硬磁性体とは励磁がなくなった場合に内部磁束が残る永久磁石タイプの磁性体を言います。(出典:フェライト(1)――磁性)
2)アクチュエーター(actuator)は、入力されたエネルギーもしくはコンピュータが出力した電気信号を、物理的運動に変換する、機械・電気回路を構成する機械要素である。能動的に作動または駆動するもの。(出典:Wikipedia)
動作原理は図1、表4を参考にすれば次のようになります。
リレーの磁気回路(鉄芯、接極子、継鉄、コイル)の変化をもう少し詳しく見れば、過渡的には表4のような状態を経過して接点のON/OFFが切り替わっていることが分かります。
つまり、リレーON時には磁気回路のエアギャップがなくなりますのでインダクタンスは小→大に切り替わり、その変化比は数倍から数十倍にもなることがあります。このために励磁によって接極子が鉄芯に引き寄せられると磁気回路の磁束密度は大幅に増加し、この現象によって開放電圧(=接極子が開放される電圧)は動作電圧に対して大幅に低下するヒステリシス特性が生じます。
また通電することによってインダクタンスが過渡的に小→大に変わりますので表2に示すように時定数τ(=L/R)が変わり励磁電流波形に段付きを生じます。その後コイルのDC抵抗値できまる定格励磁電流値に漸近していきます。
(磁気抵抗などの用語・計算式については フェライト(5) ―― 磁気回路の基本式を参照してください)
今回はリレーの用語や基本的なヒンジ型リレーの構造と動作について説明しました。次回は紹介しきれなかった他の構造を持つリレーの紹介とその得失について説明します。
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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