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リレー(3) ―― 接点構造と防塵構造、回路保護中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(28)(3/3 ページ)

» 2019年02月26日 11時00分 公開
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リレー駆動回路の保護

 リレーを復帰(開放)させるために励磁電流を遮断すればリレーのコイルはL成分ですから大きなスパイク電圧を生じ、結果としてリレーの駆動回路に損傷を与えます。
 この保護として図1に示すような電圧クランプ回路をコイルの端子間に挿入することが行われます。

図1:電圧クランプ回路の例

 しかしリレーが復帰するためにはコイルが持っている磁気エネルギー(JM)を放出することが必要であり、速やかな復帰のためにはできる限り速やかにJMを放出することが求められますがこのエネルギー放出の様子はコイルの励磁電流から求めることができます。(JM=1/2 × L × i2

リレーコイルを簡易的にLR直列回路と見なせばエネルギーは励磁電流の様子は式1で表現できます。

式1

エネルギーの完全放出に必要な時間t0式1をi=0として解けば式2になります。

式2 I0:初期電流 L:コイルのインダクタンス R:コイルの抵抗 VZ:クランプ電圧 Vcc:リレー駆動電圧 t:時間

 このt0は復帰時間に強い相関があり、表5に示す保護ダイオード(図1)の有無を比較した実際の様子からも分かるようにクランプ電圧VZを大きくした方が復帰時間は短くなります。
 結局、クランプ電圧VZは回路保護とシーケンスの時間的マージンとのトレードオフということになります。

表5:ダイオードの有無による復帰時間の変化 (クリックで拡大)
出典:マツダ技報 2010 No28 ヒンジ型a接点電磁リレーの復帰時バウンスに関する一報告

 またコイルはL成分ですから周辺にC成分が存在すると共振を引き起こし思わぬ動作をすることがあります。図2は24m離れたSW-Open(非常SW)でリレーコイルを開放する回路ですが伝送線のC成分によってLC共振を引き起こし駆動NPNトランジスタのコレクタを負に振っています。(定数、パラメーターなどは一例です)

図2:配線の寄生成分による異常電圧例 (クリックで拡大)

 図2ではR2を1mΩと1GΩに切り替えてD1の効果を観ていますが図2(b)に示すように保護ダイオードD1がない場合はスイッチS1が開いた後に駆動トランジスタのコレクタが負に振れていることが分かります。一般的なC-E間の逆電圧はVEBO(−5〜−7V)程度なのでD1がなければ信頼性の低下が予測されます。
 対策としては引き回しの再考や電圧クランプ回路とともに下図のD1などが必要になります。

 今回はリレーの接点構造や防塵構造、回路保護について紹介しましたが次回はリレーを使う上で設計者が配慮しなければならない注意点について説明したいと思います。

執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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