ポイントは“負電源” ―― 高性能温度調整器の修理:Wired, Weird(3/3 ページ)
最後に温度センサーPT-100で機器の温度表示を確認した。PT100の23℃に相当する110Ωの抵抗をセンサーの代わりに接続すると「22.4℃」と表示され、温度の変換動作も正常だった。図8に示す。(パネルの下側の製品名は消している。下の部品は外した電解コンデンサだ)
図8:正常に数値が表示されることを確認。写真手前は取り外した電解コンデンサー
この温調器は高性能で柔軟性がある温調器だ。筆者が半導体製造装置の設計を担当しているときによく使ったが、この温調器のおかげで装置の性能が格段に向上した記憶がある。
ちなみに、このメーカーの担当者を知っているので、一般的な修理価格を電話で聞いてみたら、定価で1万円を超えるという。ちょっと高すぎるように思えた。温調器には複数のアナログとデジタルの電源がある。温調器の故障は電源の劣化が原因となりやすい。特にアナログ用の電源電圧レベルの低下やリプルの劣化で、表示不良や動作不良になりやすい。なお交換した表面実装タイプの電解コンデンサーは固体ではなく電解液を使っており電源の不良原因になりやすい。
基板に実装されている電源回路を調べて、アナログ用電圧のレベルやリプルを確認すれば不具合箇所はほぼ見つかる。筆者のこれまでの経験では100%近くの温調器が修理できている。
⇒連載「Wired, Weird」バックナンバー
《次の記事を読む》
- 絶縁シートの熱履歴が物語る、電源の不良原因
DC12V出力のスイッチング電源の修理依頼があった。症状には『DC12V電源が安定しない。電圧が降下する。内部に焼けた痕跡がある』と記載されていた。非常に珍しい部品が焼けたために、不良部品がすぐに特定でき、電源を修理することができた。今回は、電源の絶縁シートの熱履歴で不良箇所を特定できた修理例を紹介する。
- さらばエンスト! ―― 劣化した車のバッテリーを復活させる方法(2)
エンストを起こしやすくなった劣化した車のバッテリーを復活させるため、バッテリー改善器を自作することにした。今回は、前回判明したバッテリー改善器の修正点を克服し、バッテリー改善器を完成させる――。
- 壊れていない基板の修理
今回は半導体製造装置に使用されている簡単なセンサーインタフェース基板の修理の報告だ。依頼された基板はI/Oのインタフェース基板で、実装されている部品は全て壊れていなかったのだが、動かないらしい。なぜだろうか……。
- アナログ基板の中にノイズ源 ―― 温度表示基板の修理
今回は、温度表示がズレてしまうという温度調節器に使われている温度表示基板を修理する。どうも温度表示基板自体には不具合はなく、ノイズの影響で誤表示を起こしているようなので、ノイズ対策を施していこう。
- 電源修理のコツ ―― 発熱部品と空気の流れ
今回は、“電源修理のコツ”を紹介したい。電源は「電解コンデンサーを全て交換すれば、修理できる」という極端な話もあるが、効率よく確実に電源を修理するためのポイントを実例を挙げながら説明していこう。【訂正あり】
- アナログ技術の継承は難しい
今回は、3相モーターのトルク制御をリニアに行うアナログ回路の修理の様子を報告したい。修理依頼主への配慮により、詳細は明かせないのだが、アナログエンジニアであれば、恐らく感銘を覚えるであろう素晴らしいアナログ回路だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.