クロック源に関してプリント配線板(PCB)レイアウトを設計するときは、クロック信号をできるだけクリーンに保つことに注意を払ってください。クロック信号はデジタル入力だと見なされていますが、これも重要なアナログ信号の1つと考えて扱ってください。配線のインピーダンスが最小限になるようにし、シリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)信号や他のノイズの多い回路からなるべく離れるように配線してください。PCBフットプリントには反射またはオーバーシュートに対処する直列抵抗とシャントコンデンサーのための余裕を考慮してください。図5は、ADS127L01EVMのクロックレイアウトの例を示したものです。
図5の赤いラインは、クロック源からADC(赤で塗られたU26)までの配線を示しています。クロック源(Y1)から出るクロックのパスは、クロック・ファンアウト・バッファ(U23)に入ります(図5の右上に青で示す部分)。クロック・ファンアウト・バッファは、元の入力クロック周波数とまったく同じコピーを2つ生成します。1つはADCを、もう1つは(R55を通って)マイクロコントローラを駆動するためのものです。
ADCに向かうクロック信号は、続いて、クロックバッファ出力と直列に接続された43Ωの小さな抵抗(R56)を通過します。これは反射を抑制するためのものです。次にクロック信号はジャンパ(JP6)に接続します。このジャンパで、3つのADCクロック周波数のうち1つが選択されます。他の2つのクロック周波数は、2つのDフリップフロップ(図5に黄色で示すU24とU25)で生成されます。これらの部品がクロックバッファ出力を分周し、「低消費電力」(LP)モードと「超低消費電力」(VLP)モードという2つのモード用のクロックを生成します。3つのモードはすべて、元のクロック源とも同期しています。図5では、赤の実線は「高分解能」(HR)モードを選んだラインを通過します。
ジャンパの後に、選択されたクロック信号は、別の抵抗(R60)とシャントコンデンサー(C76)を通過してからADCのクロックピンに到達します。このパスは、なるべくまっすぐで最短になるようにしてください。SPIインタフェース信号(緑の部分)も、ADCに到達するまで、クロック入力からできるだけ離すようにします。
ここで述べたクロックレイアウトのガイドラインに従っても、まだクロックのせいでADC性能が悪化している疑いがある場合は、クロックに関連する以下の問題点も調べてみてください。
この記事で推奨した技法や手順に従えば、クロック関連でよくある問題をほとんど防ぎ、クロック源がシグナルチェーンのノイズ要因にならないようにできるでしょう。
次回(連載11回)では、高精度ADCに与える電源の影響について説明します。
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