さて、PCBをケースから取り出してみよう。粘着性のある接着剤で固定されているため、ケースとの継ぎ目はほとんど見えず、基板が粉々にならないように慎重に作業を進めなければならなかったが、最終的には取り外しに成功した(残念ながら、このAirTagは二度と音を出すことができなくなったが)
最後に残ったのは、PCBとその下にあるダークグレーのアセンブリ(もちろん銅のスピーカーコイルも)をつなぐ小さなフレックスケーブルだ。このケーブルがなぜ存在するのかは、分解を進めるとすぐに明らかになった。
ダークグレーの部品は、それを囲む白いゴム製のケースから取り出すことはできなかったが(頑固な接着剤が大量にあることは既に述べた通り)、その一部を折ることで、ケースとの間にあった金属部を露出させることに成功した。金属、そう、ここにはマルチアンテナアセンブリがあるのだ。そのために、PCBとの間にケーブルが存在するのだ。FCCに提出されたID BCGA2187によると、AirTagは2.4GHzのBluetooth Low Energy(LE)と6489.6M〜7987.2MHzのウルトラワイドバンド(UWB)および近距離無線通信(NFC)に対応しているということだ。
最後に、PCBをもう少し詳しく見てみよう。
表面は、ケースに収められた状態で見た通り、5個の100μF電解コンデンサー(パッケージには「J107S」と書かれている)が搭載されている。GND接続の両側(上部の角)には、共有バッテリーのVCC接点がある。また、Boschの3軸加速度センサー「BMA280」と、多くのテストポイントも見える。
さて、PCBを裏返してみよう。
ここでは多くの部品が使われている。最も大きな面積を占めているのは、この設計における唯一の独自ICであるAppleのU1 UWBトランシーバー(銀色の長方形のチップ)だ。
その他には、Nordic SemiconductorのBluetoothおよびNFCプロセッサ「nRF52832」や、それに付随する32MHzおよび32.768kHzの水晶振動子、GigaDeviceの32MビットシリアルNORフラッシュメモリ「GD25LE32D」(コード保存用と思われる)、Maxim Integrated(Analog Devicesが買収)のD級オーディオアンプ「MAX98357A」、onsemiのデュアルチャンネル過電圧保護ロードスイッチ「FPF2487」、Texas Instrumentsの降圧型DC-DCコンバーター「TPS62746」とシングルチャンネルオペアンプ「TLV9001IDPWR」などが用いられている。
AirTagは、単体で購入した場合の希望小売価格は29米ドル(オプションのカスタム刻印は無料)、4個で99米ドルだ。材料費や製造、テスト、輸送、倉庫などのコストを考慮したうえでも、この製品は、おそらくAppleにかなりの利益をもたらすことになるだろう。
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