メディア

38年前の記憶 〜半導体製造装置の不具合改善と闘ったあの頃Wired, Weird(4/4 ページ)

» 2022年12月16日 10時00分 公開
[山平豊(Rimos)EDN Japan]
前のページへ 1|2|3|4       

装置販売数の増大と海外への進出

 これらの設計改善を完了させるのに半年ほど時間がかかった。しかし顧客で稼働する装置の不具合が減少し、顧客での装置の稼働率が飛躍的に増加して、顧客の信頼を得ることができた。その後、この装置の月産台数はそれまでの10倍になる30台ほどになった。かつてはお荷物だった装置が、売り上げトップの装置へ変ぼうした。この不具合対策で装置の信頼性向上がいかに重要であるかを実感できた。また工場とサービスが協力して問題点を解決する気質が生まれたことも大きな収穫で、ビジネスの拡大がスムーズに行えるようになった。

 その後は国内だけでなく、海外の顧客へ装置の販売を開始したが海外への進出ではまだまだ多くの問題が出た。しかし、その一つ一つの問題点を工場とサービスと営業が一体となってクリアしそれを積み重ねて、現在ではワールドワイドでシェアトップの装置になった。

 新規に製品を開発すれば必ず多くの不具合が発生する。製品開発はスピードが最優先であり不具合が出るのは開発の宿命であってやむを得ない。重要なことは、開発された製品の不具合を早くつかんで、その原因を考察し、早く手を打つことだ。また、不具合解決時の苦い経験を記憶し、記録し、理解しておけば新たに発生した問題でもしっかり現場の情報を把握し分析することで、必ず解決するポイントを見つけることができる。

 広く情報を得て、経験を積み、回路図や部品や製品を確実に検証するとともに、購入する機器の設計情報や不具合情報も収集すれば、良い製品を作り上げられるようになる。さらには設計者の技術力の向上だけでなく、工場やサービス、営業や取引先といった周囲の関係者と情報を共有することで、会社や顧客、そして社会への貢献ができる。

 筆者は2010年9月からこのコーナーを担当させていただき、筆者の経験やアイデアを読者の皆さんへお届けしてきた。「独りよがりな内容も多々あったと思うが、お許し願いたい」と思いながら、いずれ迎える連載最後の記事にする予定として書きためておいてあった。だが現在は半導体業界への投資が活発になっており、この記事は製品開発や顧客サポートの参考になると思った。あまりに掲載が遅くなると貴重な情報を読者に届けられなくなると思い公開することにした。

 筆者にとって引退は少し早いようで、まだまだネタは尽きない。今後もハードウェアエンジニアの参考になるような記事の寄稿を続けるつもりだ。

(次の記事を読む)

⇒「Wired, Weird」連載バックナンバー一覧

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.