水晶振動子と負荷コンデンサーで構成される等価回路を示したものが図3だ。
図3の回路では、RCL直列回路がC0とCLで並列共振する。このときの共振周波数を求める式は次のようになる。
上記において
をそれぞれ表している。
FSは水晶振動子の直列共振周波数だ。
C0+CLはC1をはるかに上回るため、FLの式はおおよそ次のように表せる。
CLに関するFLの偏差は、負荷容量の変化に伴う周波数の変化(Hz)を表す。これを直列周波数で割ることで、単位静電容量当たりの周波数の変化率が求められる。この式は可変負荷容量値CLに基づく周波数感度を示している。
この式では、CLが規定の負荷容量値に近い場合にのみ十分な近似値を得られる。負荷容量が規定値からかけ離れている場合、発振回路は正常に動作しない恐れがある。水晶振動子とコンデンサーが180度の位相シフトを生成してインバーターの入力に戻ることはできないからだ。
コストと基板占有面積を減らすため、多くのRTCは工場調整された負荷コンデンサーを内蔵している。これらは水晶振動子の規定負荷容量に十分見合ったものであるはずだ。レイアウトがうまく設計されていれば、室温での周波数誤差は極めて小さくなる。水晶振動子からRTCのパッドまでのPCBトレースは、CLにさらなる寄生容量を持たせることがある。ある市販のRTCの場合、評価キットのPCBレイアウトに基づいて最適なクロック精度を得られるよう負荷容量が調整されている。言い換えれば、この評価キットにおける寄生容量はCLの中に含められているということだ。
エージングとは経年による水晶振動子の共振周波数の変化のことだ。エージングの原因は、時間の経過とともに水晶振動子のパッケージ内部が汚染されることによる、水晶の質量の変化にある。通常、水晶振動子の共振周波数の変化は数ppm/年であり、変化のほとんどは最初の2年間で発生する。
水晶振動子を高温環境にさらすとエージングを速める恐れがある。残念ながら、水晶振動子を定期的に較正すること以外にエージング効果についてエンジニアにできることはほとんどない。RTCの中には、ユーザーがクロック周波数を手動で調整できるよう、エージングオフセットレジスタを内蔵しているものもある。
後編では、RTCの温度補償機能について説明する。
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