6式でtcが決まりましたので次に充電電荷Qを三角形の面積として求めます。
充電はチョーク電流ILがILPからIoに低下するまでの ◣の範囲(ΔIp×tc)で行われます。この電流の変化幅ΔIpはtcとLの基本式
から決まります。
電荷Qは図2の ◣三角形の面積ですから7式を用いて次の8式で計算します。キャパシター電流はチョークL1の電流ILをIo分だけ移動させたものであり電流変化幅はΔIpと同じです。
リップル電圧ΔVrはQ/Cですから9式になります。
ここで、
です。
下記の周辺定数と代表的な負荷抵抗値を設定して理論値とLT-Spiceによるシミュレーション値を比較した結果を表2に示します。両者は良好な一致を示しており9式でリップル電圧を計算できることが確認できました。
L=55.5μH C=10μF
F=100kHz δ=0.333
Vo=15V Vcc=10V
モードIIのリップル電圧ΔVrを9式ではなく1式(モードI用)で計算すると電流の減少に伴って誤差が大きくなり、Io=0.2Aで66.7mVPPとなって9式より25%小さく計算してしまいますので用途によっては問題になるかもしれません。その場合は1式ではなく9式を使って計算してください。
今回は不連続モード時のリップル電圧について説明する前段階としてチョーク電流が連続でも平滑キャパシターへの充電がtoff終了前に終了するモードについて説明しました。式が多くなってしまいました。ただ、式の意味は波形を説明するためのものであり図を参照すれば式の理解は難しくありません。
次回は今回の考え方を拡張してチョーク電流不連続時のリップル電圧について説明します。
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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