コアについては簡単ですが既に説明しましたので巻線の仕様について要点を次に記します。
①最初に導線の電流密度σ(10W程度以下の場合7A/mm2程度)から導線の直径φを算出します。
出力電力が小さいEI16型などの小形のチョークの場合には熱の伝搬距離が短いので電流密度σは10A/mm2程度まで大きく設計することがあります。リングコアなどの場合には導線の損失を外気に直接放熱するのでボビン型に対してσを大きくする傾向にあります。
②使用するコアのコア断面積Ae、飽和磁束密度Bms、チョークのLI積から巻き回数N(L・Isat≦N・Ae・Bms)を計算します。
③L値と巻き回数Nからインダクション係数AL(=L/N2)を算出し、コアのAL〜lg曲線から必要なlgを求めます。
④lgは導線の渦電流損の観点から導線径の2倍以下を目安にします。これらの結果を踏まえて必要ならコア(Ae)を変更して②以下を再計算します。
今回はチョークの仕様について説明しました。前シリーズと重複しますので要点のみに留めましたが不明な点があれば前シリーズの「ステップダウン形DC/DCコンバーターの設計(3)」や「ステップアップ形DC/DCコンバーターの設計(4)」を必要に応じて参照してください。
またフェライト自身について知りたい方は連載「中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座」 の「フェライト(1) ―― 磁性」 から 「フェライト(6) ―― トランス・チョークの設計」 などを参照してください。
次回はリップル電圧の図式解法、キャパシターの要求特性について説明します。
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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