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ワンチップマイコンには荷が重すぎ? 古い歯科技工機器の修理(1)Wired, Weird(2/2 ページ)

» 2026年02月12日 10時00分 公開
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ワンチップマイコンには負荷が重すぎる......

 コントロール部にはワンチップマイコンの8749とA-Dコンバーターがあった。なお、三相モーターのコントロール用ICは実装されていなかった。マイコンはA-Dコンバーターで回転数調整のボリウムの値を読み込み、三相モーターの制御信号をプログラム(ファームウェア)で直接生成しているようだった。この構成で高精度の回転制御を行うのは、このワンチップマイコンにとっては負荷が重すぎるように思われた。また、この回路では正確な周波数での回転制御を実現するのは、かなり難しい思われた。

 参考までにGoogleのAIモードで検索したところ、以下の回答があった。

 三相モーターは安定した回転が得やすい構造ですが、マイコンでトルクや速度を精密に制御するには、インバーターを用いた制御が不可欠です。

 妥当な回答だ。

 三相モーターの回転数を安定させるためには、モーターの駆動電源が安定していること、マイコンの電圧と発振周波数が安定していることが必須だ。モーターの駆動電圧は、50V 10000uFの大型電解コンデンサーで整流されていた。LCR-T4で容量を測定したところ、11000uFで正常だった。5V電圧をマイコンの左にあるサブ基板のLS221で確認した。最初は5.06Vだったが、その後に4.65Vまで低下した。この電圧低下が不具合の原因だろう。5Vの電解コンデンサーの補強が必要と思われた。図4に示す。

<strong>図4:左はコントロール部を拡大した写真。右は5V電源を10V 470uFの電解コンデンサーと50V 10uFのセラミックコンデンサーで補強したあとの状態</strong> 図4:左はコントロール部を拡大した写真。右は5V電源を10V 470uFの電解コンデンサーと50V 10uFのセラミックコンデンサーで補強したあとの状態[クリックで拡大]

 図4左はコントロール部を拡大した写真だ。右は5V電源を10V 470uFの電解コンデンサーと50V 10uFのセラミックコンデンサーで補強したあとの状態だ。補強後、5V電圧は5.06Vで安定した。これで良さそうだ。

 駆動電源と制御電源の確認と補強は終わり、AC100Vとハンドピースを接続して回転動作を確認した。その結果、モーターの回転は安定し、レバーを動かすと高速回転した。低速回転時の駆動電源は24.5Vで、高速になると基板上のリレーが動作して38.0Vになった。

依頼者と認識の食い違いが判明

 なお、モーターには微振動があったため、確認のため動画を撮って依頼者へ送った。

 依頼者からは、

 最後に最高回転になってるのに波打ってるので異常です。こちらではあの振動は出ていなかったと思うのですが、振動でもあの波打ちは出ないです。

 ということだった。回転不安定という不具合の内容で預かったが、具体的にどのような不安定さを指しているのか、認識に食い違いがあることが分かった。

 そこで『このコントローラーの仕様書は見てますか?』と質問したが、

長年、現行機種と遜色なく満足して使用していた物に対して仕様書等を見る必要はないと思うのですが。

 と返事があり、これ以上は話しても無駄だと判断した。

 この機器では、マイコンが三相モーターの制御信号シーケンスをファームウェアで生成している。『マイコンではボリウムの読み込みやモーター出力での基準タイマーの割り込み、ウォッチドッグタイマー等の安全管理の処理等がある。これらの雑多な処理もマイコンで行っており、モーターを高精度で回転させることは無理でしょう』と依頼者へ連絡した。

 なお、クルージングの設定を行えばボリウムの読み込みは回転開始前の1回のみとなり、マイコンの負荷が軽減されるため、連続回転動作に集中でき回転精度は上がるかもしれない。しかしマイコンの素人の知人には理解してもらえそうにない。修理品を依頼者へ返送して、動作を確認してもらうしかなかった。

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