テクトロニクスは、パワーアナライザ分野に進出する。「PA4000」シリーズは「スパイラルシャント(Spiral Shunt)」技術により、周囲温度が0〜40℃の環境で、電圧/電流基本測定確度は0.04%を実現する。
テクトロニクスは2013年4月、パワーアナライザ分野に進出すると発表した。第1弾として発売するのが「PA4000」シリーズで、特許申請中の「スパイラルシャント(Spiral Shunt)」技術を採用することにより、従来の競合製品に比べて、広い温度環境に対応でき、その上ひずみの大きい電力波形であっても、確度の高い測定を行うことができるという。新製品は電気自動車/ハイブリッド車や太陽光発電システムなどの電力変換回路、インバータ回路、モーター駆動回路などにおけるパワー解析の用途に向ける。
テクトロニクスは、パワーアナライザ分野に進出するために、スパイラルシャント技術を含めパワーアナライザに関するIP(Intellectual Property)や設計技術など、製品開発に必要なコア技術をパートナーのVoltechより取得した。これらの基本技術と、テクトロニクスが有する波形観測や信号処理の技術などを融合してPA4000シリーズを開発した。
PA4000シリーズは、スパイラルシャント技術を用いることで、0〜40℃と比較的高い温度環境でも、電圧/電流基本測定確度は0.04%を実現している。「競合他社製品の中には電圧/電流基本測定確度が0.04%より優れたものもあるが、それは温度環境など限られた条件でのみ保証される性能である」と同社は主張する。
また、チャネルごとに2つの電流シャント(スパイラルシャント)を内蔵している。それは30ARMS、200Apeakまで対応可能な大電流測定用の30ARMSシャントと、微小な電流を高い分解能で測定できる低電流測定用の1ARMSシャントである。これによって、標準でμWからkWまで、幅広い測定レンジに対応することが可能となった。
さらに、独自のDSPアルゴリズムを搭載することで、ノイズやひずみなどによって変動する信号波形に対しても、安定した周波数トラッキングを可能とした。波形の波高値(ピーク値)と実効値の比を示す「クレストファクタ」(波高率)は「10」に対応している。このため、次世代材料のSiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)を用いたパワー半導体など、波高率が比較的高いデバイスを搭載していても、高い確度で測定することができる。
電力解析の測定項目は、電圧実効値(VRMS)、電流実効値(ARMS)、有効電力(W)、皮相電力(VA)、無効電力(VAr)、クレストファクタ、周波数、位相角度、積算有効電力量(W-hrs)、100次までの高調波測定および変換効率など、広範である。
特定アプリケーション用のテストモードとしては、「PWMモーター駆動テスト」、「待機電流テスト」、「電子バラストモード」、「積分モード」などが用意されている。これらのテストモードはスイッチ1つで切り替えることができ、技術者はセットアップの時間短縮や設定ミスの低減などが可能となる。
この他、外部のPCに接続するためのUSBやイーサネット、RS-232などのインタフェースを標準で装備した。さらに、30ARMSを超える電流も電流トランスデューサを接続することで測定できる。電流トランスデューサは、高確度(0.05%以下)測定用途向けの「CT-Sシリーズ」、汎用用途向けの「CT-Mシリーズ」、クランプ型で装着が容易な「CLシリーズ」から選べる。
PA4000シリーズは、入力数によって1〜4チャネルまで4モデルを用意した。標準価格(税抜き)は1チャネル品が108万円、2チャネル品が143万円、3チャネル品が168万円、4チャネル品が198万円である。
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