富士通セミコンダクターは、「ARM Cortex-M4」を搭載したマイコン「FM4ファミリ」の第1弾製品群84品種を7月からサンプル出荷する。産業機器やインバータ搭載家電向け。
富士通セミコンダクターは2013年6月6日、CPUコアに「ARM Cortex-M4」を搭載した32ビットRISCマイコン「FM4ファミリ」(84製品)を製品化し、7月末からサンプル出荷を開始すると発表した。価格は、1Mバイト容量のフラッシュメモリー、128Kバイト容量のRAMを搭載するMB9BF568RPMCで、1000個購入時800円となっている。
富士通セミコンは2010年から、ARM Cortex-M3を搭載したマイコン「FM3ファミリ」を販売し、これまで570品種以上を展開してきた。今回の新製品は、Cortex-M4を採用するFM4ファミリの第1弾製品となる。
FM4ファミリが搭載するCortex-M4に備わるDSP(デジタル信号プロセッサ)とFPU(浮動小数点ユニット)により、FM3ファミリに比べて、高度で複雑な演算処理が行える。内蔵フラッシュメモリの動作アルゴリズムも見直し、バス幅を拡張してCPU動作にノーウェイトでリードアクセスできるようにし、「高速化と低消費電力化を両立させた」(同社)という。FM3ファミリで最も高い性能を持つ「ハイパフォーマンスグループ製品」と比べて、約4倍以上の処理性能を実現しつつ、動作周波数当たりの消費電力を半分に抑えたとする。
各種周辺機能も強化した。タイマー機能では、三相モーター制御用タイマーで非対称PWM波形出力対応やアナログ/デジタル起動トリガを複数化を行った上で、最小分解能を6.25nsに改良した。アナログ回路も改め、内蔵発振器の精度はトリミング機能により全温度±2%まで抑え、D-Aコンバータは12ビット分解能での変換が可能になり、A-Dコンバータは変換速度が従来比2倍となった。
通信機能は、SPI通信の高速化を行い最大20MHzまでデータ転送速度を速めた。データ長の可変機能も従来の最大9ビットから最大16ビットまで増やしている。同時にCPUを介さずにデータを高速に転送できるDSTC回路を追加した。同回路は、ディスクリプタ方式を採用し、あらかじめメモリ上に構築されたディスクリプタの指示内容に従い、メモリや周辺デバイスに直接アクセスし、データ転送が行える。このシーケンシャル動作によって、ソフトウェア(ROM容量)の縮小やシステム動作時の消費電力の低減が図れるという。
外部メモリとの接続は、従来のSRAM、NOR、NANDに加えて、SDRAMへの接続機能を追加し、SDIOインタフェースにも対応した。
FM3ファミリの特徴だった3V、5Vの両電源電圧への対応は継続し、FM3ファミリの一部で採用されていたワークメモリ(32Kバイト)を標準搭載している。
なお、富士通セミコンのマイコン事業は2013年7-9月中にSpansionに売却されることが決定している(関連記事1:富士通ブランドのマイコンは消滅へ、だが「富士通半導体」は継続/関連記事2:Spansion CEO、富士通のマイコン/アナログ半導体事業買収について会見)。富士通セミコンでは、「今後、FM4ファミリとして、大容量フラッシュメモリ搭載品や、産業機器向けにイーサネットMACを搭載した製品、オーディオ機器向けにI2S/HDMI-CECを搭載した製品を順次追加する予定とする。またARM Cortex-M0+を搭載した「FM0+ファミリ」も投入を予定し、「Cortex-Mシリーズの最新コア3種類を全て製品化する」と、従来と変わらない開発方針を掲げている。
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