突防抵抗の両端をサイリスタ、トライアック、リレーなどで短絡し、損失を低減すると言っても万が一、部品の故障などで短絡動作が上手く行われなければ損失は低減できません。
例えば、図3の20W形抵抗器では空間への放熱抵抗が10℃/W程ですので36W損失時には360℃程度の温度上昇が発生します。このため故障のまま放置すれば基板や機器の焼損にもなり兼ねませんので安全対策として温度ヒューズを抵抗体の近傍に組み込んで一体化した部品も市販されています(図6)。
用いられる温度ヒューズはACラインの電流を遮断するのでヒューズ単体で安全規格を取得している必要があり、当然組み込んだ一体形の抵抗器としても認定品でなければACラインに使用できません。図6に示す部品には安全規格のC-ULレコグナイズドコンポーネントマークが表示されていることが確認できます。
大型電源で1つの突防抵抗では必要サージエネルギーに満たない場合には複数の抵抗器を直列に接続して使用することになりますが、この場合には全ての抵抗器に温度ヒューズが必要になるわけではありません。
図5に示すように1つの抵抗器の温度ヒューズが作動すれば回路の電流が遮断されるため、残りの突防抵抗には温度ヒューズは必要ありません。
この場合には部品の不要な帯電を防ぐために温度ヒューズ側の端子をAC電源に最も近い活電部側に来るように設定します。
正式には体積抵抗率といいます。抵抗率の単位は〔Ω・m〕ですがなぜ電気特性に物理単位の長さの単位がついているのでしょう?
素材の特性を比較するには同じ条件で比較しなければなりません。電気の抵抗率の測定は単位立方体を用いて図7のように対面間の抵抗値を測定します。現在の国際単位SIではメートル(m)単位で測定することになっていますので基準となる立方体は1×1×1mのものです。
この場合の対面間の抵抗値は面積S(m2)が並列個数に比例し、長さLが直列個数に比例することを考慮すれば次の次元を持つことが容易に分かります。ここでρは抵抗率です。
このように面積と長さの次元の比から抵抗率には長さの次元が必要になります。古い文献などではCGS単位で表示されているものもありますが長さの次元を考えれば次のように換算できます。
cmはセンチメートルですから10-2mを代入すると(誤解を防ぐために等号は使わず"相当"の意味で⇔を使います)
αΩ・cm=αΩ・(10-2m)=10-2×αΩ・m ∴100×Ω・cm⇔Ω・m
あるいはCGS単位では長さL=10-2m、面積S=10-4m2ですから、面積(並列数)でSI単位の1万倍に増加し、長さ(直列数)で1/100倍に減少することから総合ではCGS単位での抵抗率はSI単位の100倍になると考えることもできます。
SIで1Ω・mの材料を1cm3の立方体にした時の抵抗値を求めます。
つまり1Ω・mの材料はCGS系で100Ω・cmで表される材料と等価です。なお、抵抗率は含まれる不純物によって値が変わり、桁数は信用できるとされていますが厳密な値がほしい場合は各種物性表などの値ではなく、実際の材料を必要に応じて測定されることをお勧めします。
次回も汎用品ではありませんが代替えのない抵抗器について説明していきたいと思います。
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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