メディア

根本原因に対処! 火花を散らす半導体製造装置の高圧電源を修理【後編】Wired, Weird(3/3 ページ)

» 2022年05月18日 11時00分 公開
[山平豊(Rimos)EDN Japan]
前のページへ 1|2|3       

突入電流の怖さを理解せずに設計した?

 今回の修理では、突入電流防止に使用されている25Ω、20Wの大きなホーロー抵抗が切れていたことには吃驚した。この突入電流防止抵抗が正常であれば、突入電流は10A程度に制限されリレーがオンする5秒後には充電はほぼ終わっており、抵抗が過熱したり、断線したりすることはない。突入電流防止抵抗が切れた原因は高電圧出力のノイズで回路が誤動作してリレーの接点がオフして突入電流防止抵抗を通して大電流が流れて抵抗が過熱して抵抗が断線したと推定された。

 また突入電流の怖さを理解せずに設計された可能性もあった。電解コンデンサーの充電電圧が十分な電圧になったことを確認せずに、電源投入の5秒後に突入電流防止のパワーリレーを動作させていたかもしれない。このままの機器では突入電流防止抵抗が断線したら必ず突入電流が発生して、火花が出る危険な状況になっていた。

突入電流防止抵抗を外した通電確認を

 突入電流防止の動作が正常かどうか確認する方法は簡単だ。突入電流防止抵抗を外して通電することで機器が起動せず、リレー接点がオンせずに火花が出なければ正常だ。開発品の評価時点でも、この確認を試験項目に入れてほしいと思う。

 電気機器で火花が発生するとその機器だけでなく、周辺の機器の誤動作などを引き起こす。まして引火性ガスや有機溶剤を使う半導体工場で火花を飛ばせば大きな災害にもつながる。

 「いかなることがあっても電気機器では火花は飛ばしてはいけない」このことを強く意識して読者には安全で最適な突入電流防止回路の設計や評価を心がけてほしい。

 余談だが、改造した機器の報告書を事前に出していたが、顧客から「回路を勝手に改造した」とクレームが入った。顧客へは火花が飛ぶ原因と対策内容を再度説明して了承してもらった。同様な危険な機器が半導体工場の現場にまだ設置されているかもしれない。

⇒次の記事を読む

⇒連載「Wired, Weird」バックナンバー

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.